進路
このクラスは理系の集まりだ。
でも私は、秋に急に進路を文系に変え先生に怒られながらも近代文学部を受験した。
本当にやりたいことがあるなら絶対やった方がいいよ!
という結衣の純粋な力の入った声に背中を押されたからだ。
私は「檸檬」という小説を好きになり、そこから夏目漱石、太宰治の本を読み始めてその時代の小説が好きになった。
今のハイテク社会とは違う、言うなれば超アナログな社会では、スマホなんて物はもちろん、メールも携帯電話も存在しない世界。
唯一あるのは固定の黒電話が下町のお店に1台置いてあるか無いかの程度。
そんな中での人々の関わりは今の、電波によって飛んでくLINEの短文の行き来とは違って、もっともっと密度が濃かった。
手紙を書いて投稿し、それが何日も経って相手の元に届けられ、そこで初めて読まれまた返す。
どこにいても会話を出来る世の中になったことで私たちは待ち合わせに遅刻しそうな時に予め連絡を入れられるし、わからないことはなんでもググってその場で答えを知れる。
本当に便利な世の中になったと思う。
でも、そのせいで人は電波に頼りすぎてる気がする。
そんな私もスマホを使ってるがLINEが苦手だ。
相手の顔が見れない中で画面の中に返事をする。
相手が今どんな気持ちなのかも解らないのに送る言葉に、どれだけの重さがあるか、私はわからない。
私も自分の気持ちを表現するのに顔文字を使ったりするが、そんなの上辺だけの付属に過ぎない。
その時の気持ちを表現するのには足りなすぎる。
メールだった時代はまだ皆文字だけで、顔文字も無くて何も気にせずに楽だった。
こんな事言ってると、お前何歳だよ、とか母親が突っ込んでくる。
私はどやっとしながら、ピチピチの17歳よ。と片目をウインクしながら母に返した。
もうその17歳が終わるかと思うと1人で悲しくなった。
あの時近代文学部に変えていなければ、、、「私はきっと…」なんてことは今は考えないようにしてる。
でも結局、どっちに進んでも必ず後悔はするし、気分の晴れない日は高校と同じで大学に行きたくない日もあるし、辞めたくなる時だってあるし、あの時に戻れればなんてことをたくさん思うだろう。
そう思う事は当たり前なのは解ってるけど、どうしても考えそうになる。
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