第8話 祝言
祝言は基本恋愛ですると言うのは武家社会では少なく、家の結びつきを強くする為にあった
菊にはその制度が理解できていてもベアトリスに理解できるかが分からなかった
菊とベアトリスは村井家の屋敷に戻った
「申し訳ございません、信長様はあのような方ですので・・・もしどうしても我慢ならなかったら遠慮なく言ってください。私の方から信長様に詫びておきますので・・・」
その菊の言葉にベアトリスは首を横にふる
「いえ、日の本で菊様ほど信頼できる方はおりまセン。逆に男でよかったと思ったくらいデス!ですが・・・」
ベアトリスは口をとがらせて菊に言う
「何故、男である事をずっと黙っていたのですカ・・・」
「あはは・・・一々皆さんに説明してるとそれだけで時間かかりますので・・・」
菊の言い訳にため息をつきながら問い詰めるのを諦めたベアトリスは頭を下げ
「これから、よろしくお願いいたしマス」
菊とベアトリスが祝言することが正式に決まった瞬間であった
「はい、これから二人で頑張ってまいr・・・」
菊がそう言ってベアトリスの手を取ろうとした瞬間
「菊ーーーーー!!!!」
大声で菊を呼ぶものが居た
バタバタと廊下を走る音
音をする方を見ると貞勝が走って来ていた
「でかしたぞ菊!信長様の養女と祝言できるとは!これで村井家も安泰じゃ!!お相手様にはもうお会いになったn・・・この者は誰じゃ?見知らぬ格好をして居るが・・・」
貞勝はベアトリスに気づき菊に質問した
「こちらは異国の地、ポルトガルから南蛮の物を売りに日の本に来たベアトリス殿です。私の馬印や軍配を売ってくださりました」
「おぉ!あの鐘か!異国の者を見るのは初めてだったゆえに失礼いたした、拙者、村井貞勝でござる!ベアトリス殿はおもしろい物をたくさn・・・」
「そして、こたび信長様の養女になられ私と祝言をあげる事になりました」
「なんじゃ菊、まだわしが話しておったのに。そうかそうか、菊とベアトリス殿が祝言・・・・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
その大声に菊やベアトリスは驚いた
それ以上に驚いていたのが貞勝とその家臣であった
「・・・菊・・・よ・・・異国の者を信長様は養女になさったのか?」
「はい」
「そして、お前の嫁に?」
「はい、信長様が決めて下さいました」
貞勝は目を丸くしていたがやがて観念した様にため息をつき
「お主の人生はまことに面白き物じゃな。信長様の養女じゃ、大切にするのじゃぞ?」
その貞勝の言葉に2人は頭を下げた
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村井家は勿論、織田家に激震が走った
新参の菊が信長の取り計らいで祝言をあげる
しかも相手は信長様の養女で異国の者であると
つまり信長は菊を織田家一族に向かい入れるという事だ
「この藤吉郎、菊様がベアトリス様と結婚すると聞き大変驚きましたぞ!しかもベアトリス様は御屋形様の養女になられるとか・・・これで菊様は織田家の婿殿、大変うらやましゅうございます・・・」
祝言の祝いを述べにやってきた藤吉郎は信長の親戚になった菊を羨ましがった
「ですがこれで新参だからと甘えが許されなくなりました。これから更に頑張りませんと・・・」
「菊様なら大丈夫でございますよ!それより・・・」
藤吉郎は菊とベアトリスを見比べた
「お二人は性別がまるで逆のお姿ですな!菊様は美しく、ベアトリス様勇ましく、とてもお似合いの夫婦ですぞ!」
信長は南蛮装束が気に入ったのかベアトリスの格好は信長の前でもそのままでよいと許可をしていた
南蛮装束はジュポンと言う物を履いており、日の本の女性が到底履きそうな物ではなかった
顔は女性らしいが金色の髪を短く後ろで結んでおり菊よりかは男っぽい格好をしている
逆に言うと菊がおなごにしか見えないのだが
「藤吉郎サン!私はれっきとした女子デス!」
むっとすねるベアトリス
藤吉郎はすぐにひれ伏し
「申し訳ございません!まさか気になされていらっしゃるとは思わず・・・」
ベアトリスに謝罪した
「ベアトリスよ、許しておやりなさい、藤吉郎殿は織田家でも必ず重要なお仕事をこなされる方。藤吉郎殿も面をお上げください」
菊はベアトリスをたしなめ藤吉郎に謝罪は必要のない事を伝える
「菊様・・・。拙者をそこまで見込んでくださり誠にかたじけのうございます。」
「いえ、藤吉郎殿、祝言は今宵行われる予定です友人として是非お越しくださいませ」
「よろしいのですか?拙者は足軽大将、菊様や御屋形様のご養女様の祝言に顔を出せる身分ではございませんが・・・」
「何をおっしゃっているのですか、私たちは同じ百姓の出。勿論です。お待ちしておりますよ!」
藤吉郎は目を潤ませながら
「はっ!必ず伺いまする!!」
菊に感謝して屋敷を出て行った
「元気な方ですネ」
あきれているベアトリス
「ふふっ、そうでしょう。ですがあの様な方は必ず大成されます」
「分かるのですカ?」
菊はふふっと笑って
「いえ、ただの勘ですよ」
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菊とベアトリスの祝言はとても盛大な物となった
ベアトリスの養父である信長は勿論の事、織田家の重鎮の方が皆集まっていた
中には出世をし続ける菊を疎んでる者もいるがそれでもここまで来ると菊の実力を認めずにはいられなかった
藤吉郎が余興でふんどし一枚となりみんなの前で踊って楽しませ、それを他の方が見て馬鹿笑っている
そこにはつい少し前まで今川に攻められ織田家滅亡を覚悟していたとは思えない空気が流れていた
「ベアトリスよ、菊に良く仕えるのだぞ?」
「ハイ!必ず良い嫁になりマス!」
その返事に信長は気を良くし
「うむ。皆の者、わしはこれで失礼する。本日は思いっきり騒ぐがよい!」
そう言って立ち上がった
家臣一同ひれ伏した
信長が出ていくと、皆が菊とベアトリスに酒を注ぎに来た
「菊殿、こたびはまことにおめでとうございまする!」
「ベアトリス様、ポルトガルはどんな所でございまするか?」
皆、思い思いの言葉で祝福してくれた
菊にとってもベアトリスにとっても疲れながらもとても幸せな祝言となった
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皆、広間でばか騒ぎして寝てしまっている
菊とベアトリスは寝室に戻った
「さて私たちも寝ましょう」
「菊サマ・・・」
もじもじしながら菊を見るベアトリス
「どうしたのですか?」
「私、初めてでス・・・・優しくお願いしマス」
「えっ・・・」
そこで菊は夫婦の営みについて思い出した
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