第15話 南蛮胴
藤吉郎は半兵衛の策を信長に伝え、そのまま西美濃3人衆の調略に向かった
菊は半兵衛に陣形・野戦の智略を教えてもらいながら、他の時間は信長に命じられていた南蛮の鎧を日の本向けにどう手直しするか考えていた
南蛮の戦はベアトリス曰く、重い刀に似た剣と言う武器、南蛮風の弓矢を使う
なかでも剣は相手を切ると言うより叩き殺す使い方をするらしい
なのでこの南蛮の鎧はそういった剣に強くするためにとても重く出来ていた
「まずはこの鎧の外見を損なわない程度にしなくてはなりませんが・・・ベアトリス・・・なぜこの鎧は袖や下半身の防具がないのですか?」
この防具は胴当てしかない
「これは海の兵用の防具でス。陸の兵にはこれに腕部分、下半身部分が付きまス」
「つまり、南蛮の海戦には弓矢は使われないと・・・」
剣で殴り合う南蛮戦は腕や下半身は弓矢避けに使われると言う事が予想できる
それがないという事は海戦では弓矢は使われないという事だろう
「はい、弓矢じゃなく大砲と言う鉄砲を大きくしたものが主流となりまス。大砲にかかれば腕や下半身に重たい防具をつけても船を木っ端みじんにするので意味g・・・」
「ちょっとお待ちなさい!?船ごと木っ端みじんなのですか!?」
日の本では近年、鉄砲というのが入ってきている
雨などに弱いとされ梅雨などの雨季、山が多く雨の多い地域がある日の本では使えない物とされてはいたが、使える場所では急所に当たれば一撃で人が死ぬ恐ろしい物だ
鉄砲でも角度や当たり所によっては鎧が防いでくれることも多いし船を壊す威力はもちろんない
それなのに鎧をつけていても関係ない兵器がこの世界にあるとベアトリスはいうのだ
「はい、大砲は鉄の球を火薬で飛ばし船や建物に当て壊すか、地面にぶつかって粉々になり破片が人に突き刺さって殺すという兵器でス。破片はとても小さい物で鎧を着ていても当たることも多いですし、船を沈められたら逆に重い鎧は邪魔になりますので鎧は兜と胴部分のみが主流でス」
「そ、それでその大砲とやらは日の本で製造は可能ですか?」
ベアトリスは菊の質問にうーんと悩みながら
「出来なくはないでス。ですが、この国にある物で作るとなると命中に難がありまス。少しでも湿気が筒の中にあれば軌道が変わると思いまス。それに大砲はもの凄い大きいでス。山の多いこの国にはその大砲を持っての移動は不自由すると思いまス」
「なるほど・・・まだまだ実用はできないのですね・・・」
菊は少しほっとした
大砲があれば短期決戦で戦に勝てる
しかし相手が大砲を持っていたら・・・
こちらが少し兵数が多くても負けてしまうだろう
しかしまだ難点も多い今なら運用・作成の構想は進めないといけないのだろうがまだ危惧すべき兵器ではないという事だろう
「そうですか・・・ではひとまず南蛮鎧に戻りますか・・・南蛮の陸兵はどのような防具をつけているのですか?」
「これに鉄製の防具を全身につけまス。かなり重いでス。また鉄で出来ているので一人一人大きさを測りその人専用の鎧を作りまス」
「なるほど、それだけ重いと石垣などを登る必要も出てくる日の本の戦では使えないでしょうね。大将である信長様は石垣を登らないにしろ重すぎると馬が疲れてしまう。腕や下半身は木製の草摺、袖等をつけるで対応しましょう。胴は前面はこのまま使い、後ろは木製と紐で調節できるようにしましょう。桜、今の希望の鎧の内容を職人に伝えてきなさい」
「はっ!」
部屋の外で待機していた桜が職人に伝えに行く
「あと出来ることは・・・」
「菊様、一つよろしいでしょうカ?」
ベアトリスが菊に尋ねた
「なんでしょう?」
「この国の頂点にいる方はどういう人なのですカ?」
「んー。武・・・つまり力を重視した将軍と政を重視した天皇がいまして、形式的には天皇が頂点なのですが、実質的には将軍の方が力を持っていると考えていいかと思いますよ」
「なるほど、その方々の格好は織田家の方々同じ感じなのですカ?」
「将軍は同じに近いと考えていいのでないでしょうか?」
「なるほど、ではポルトガルの君主と同じ様にマントをお付けくださいマセ!」
ベアトリスがにこっと笑う
「マント・・・とは?」
尋ねる菊にベアトリスは南蛮商品の入っている蔵に走って何か布を持って来た
「これでス!この布をこの様に・・・」
そういってマントを体に巻き付けるベアトリス
「ポルトガルの君主はこの様にマントを体につけるのでス!」
「なるほど・・・確かにそれなら背面部分の木製の所を隠すことができる・・・ベアトリス、信長様の鎧に合うマントはありますか?」
「そうですね・・・では外側を黒、内側を赤にしてはいかがですカ?」
「ほう、なにか意味が?」
「マントは赤が主流なのですが、戦場に出るのに外側まで赤なのはめだちマス。なので外は黒にしておくべきでス!」
菊はベアトリスの進言に頷く
「では、そのように手配をお願いいたします!」
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