第8話 2+0=1+1

 金曜に過酷な労働を強いられた所為か休日の土日は、一日中家で寝て過ごした田中だった。さて英気を養った田中は、休み明けから永久機関に関する本格的な勉強をする事になる。


「我が社は舌鋒ぜっぽう鋭い久杉雄太に対抗する為、今日から更に本格的な授業をしたいと思います」


 朝から明日川の気合の入ったスピーチである。生徒は相変らずのジャージ娘の葉華莉と田中だ。


「先生、今日は何の授業ですか?」


 葉華莉が尋ねた。


「葉華莉さんにとっては懐かしい学生時代の回想録に過ぎませんが、高校で習う物理の基本から始めます」

「まず、これ」


 ペチンッ、明日川は手に持ったペンを床に落とす。


「明日川先生、今日はペンの耐久性の授業ですか」


 田中はボケなのか、真面目なのか分からない質問をする。


「残念、壊れなかったわね。じゃなくて落下です、即ち重力を勉強します。早速ですが、重

力はなぜあるのでしょうか?」


「ニュートンが発見した万有引力があるからです」


 葉華莉は、すぐさま答える。


「では、その万有引力とは何でしょう?」


「物体間に働く力で、互いの質量の積に比例し距離の二乗に反比例する関係を持つもので、原子や素粒子も含めて存在するあらゆるものを引き付ける根源的な力です。」

 

 葉華莉は、難なく答える。


「だそうです。では、それをどうやって確認したのでしょうか?」


「18世紀後半に科学者キャヴェンディッシュが、ばねの一種のねじりバネというものを使った装置で大小の鉛を使って引き合う実験をし、初めてその存在を確認しました」


 葉華莉は、一般人が把握していない事も簡潔に答えた。


「だそうです。納得しましたか? 田中君」


 ニュートンと万有引力という名前くらい知っている田中だが、ここまでの話を聞いて疑問が沸いた。


「良く分からないけれど、そうなると万有引力を本当に見つけたのってそのカビンデスって人になるんじゃないの?」


「少々イントネーションが違いますが、そうなりますね。ニュートンは万有引力を見つけたと言うより、あるだろうという仮説を立てたに過ぎなかったと言うことです」


 ニュートンに厳しい明日川であった。


あいだに何も無いのに物と物が引き合う、身近にあるものでは磁石くらいしか思い付かないけれど、ニュートンはあるだろうという仮説を立てました。そして、地球と月が引き合っているという結論にも辿り着いたのよ」


「でも何故、月が地球に落ちずにその周りを回っているか分かりますか?」


「月が地球の周りを回っている速度と地球の重力とが釣り合っているからです」


 葉華莉は、模範解答だと思える返答をしたつもりだったが


「それは間違ってはいないけれど、正確ともいえないわね」


 鬼教官明日川は厳しかった。


「えーなんで? そう習ったのに」


 自信があっただけに不満げな葉華莉。


「月は地球に常に落下していて、地球が丸いからというのが単純で明確な答えです」


 明日川は淡々と解答を述べる。


「月が地球に常に落下しているのは分かります、でも地球が丸いからと言うのは重要なんですか?」


 不満と疑問が払拭されていない葉華莉は、すぐさま明日川に質問した。


「重要よ。ちなみに月の代わりに人工衛星でもいいけれど、地球の周りを回転しながら燃え尽きないで地球の中心まで落下していくと考えてみまようか? では田中君、それってどんな落下の道筋を通るかな? 感でいいわよ」


 部外者の振りをしていたが、いきなり話の中心に引きずり込まれた田中。


「えーとなんだろ、多分ぐるぐると渦巻きの様になるのではないかと思います」


 田中は、実にいい加減な回答をしたが明日川からの解答は


「正解です。人工衛星は螺旋を描いて落ちていきます。螺旋を描ける理由はズバリ地球が丸いから、地球の重力の重心ともいえる場所がほぼ中心となり人工衛星がそこに向かって落ちるからよ」


 意外にも当たっていた。


「あ、そうか。角ばってると重心の位置が中心ではなく、変な軌道描いてしまいますね」


 葉華莉はすぐさま理解する。


「次は重力における特別な現象についてです。ペンはこうやって」


 ペチンッ、明日川がまたペンを落とす。


「落ちていきますが、どれ位の速さで落ちるでしょうか?」


「先生、正確には加速度です。9.8メートル毎秒毎秒の等加速度で落ちていきます」


 葉華莉から毎秒毎秒という聞きなれない名称が出たが、速さを時間で割るとこの様な単位となる。そしてこれは、加速度の単位として使用される。


「そうですね加速度です。速度が常に追加されていく等加速度です。葉華莉さんにさっきのお返しを頂きました。ご馳走様です」


 明日川から、お株を奪い愉悦に浸る葉華莉。


「ここで等加速度と言う不思議な現象を葉華莉さんから教えてもらいました。おまけに重力と言うは、重さに関わらずみんな同じ加速度で落ちていくんですよね。ガリレオさんが、重さの違う玉を転がして実験で確認してくれた自然の原理ですので、疑う余地がありません。が、先生は不思議でとても理解できません」


「先生、それは地球が地上の物体よりも重くて、公平に物を引きつけているからですよ」


 愉悦が収まらないのか、当然の様に答える葉華莉。


「なら、仮に地球と同じ質量をもった星が地球の直ぐ近くにあったら、地球とその星、どちらに落ちていくのかなぁ?」


 視線を葉華莉に向ける明日川。


「それは、互いに引き合うだけでどちらとも落ちません」


「そう、連星という天体でも見られるけれど、不思議な現象よね。特に2015年に発見された地球から16万光年の所にあるタランチュラ星雲の中の連星は凄く近い距離にあって引き合っているけれど表面以外はくっ付かない。逆に言うと反発しあっているけれども、同時に引き合っているとも言えるのよ」


 連星とは2つの星がその間にあるであろう重心を中心に回転している状態を指す。明日川はその天体現象の矛盾を葉華莉に投げかける。


「その原因は私にはわかりませんけれど、それに似たもので超伝導体のピン止め効果という現象もあります」


 葉華莉が田中の理解できない領域へと進んで行ってしまった。


「田中君には、まだ分からないと思うけれど、その現象は磁力で反発していると同時に磁力で引き合う力も介入しているのよね。反発しあっているけれど引き合っているという矛盾を目で見れる希な現象よ」


「でも俺、超伝導ってテレビで見た様な記憶があります。ピン止め何とかってのは知りませんけれど」


 それは田中が辛うじて幼少の頃の記憶に残っていた、テレビの化学実験の事だ。


「そっか、超伝導の実験って結構やっているからね。まあ、それはともかくとして、そうなると連星は超伝導によるものなのかもしれないということかしら?」


「それはわかりませんけれども、星の現象は万有引力を外して説明するべきではないと思います。それに先生の言い方だと、天体現象が万有引力で成り立っていないような言い方に聴こえますよ」


 葉華莉は、明日川が何を言いたげか薄々気付いた。


「そうよ。天体現象には磁場の影響も多大に受けているし、そもそも万有引力と重力が同じだなんて、本当のところまだ確定されていないんだから」


「ええ? でも、それが今の科学の根源的な土台とも言える考えですよ。それがなければ様々な宇宙論も消えてしまいます」


 葉華莉は現代科学をなんとしても死守しようと対峙する。


「天体現象があたかもそうなっているから、ニュートンの万有引力は正しい? キャヴェンディッシュの実験で万有引力が見つかったから、重力の正体は万有引力である筈ということかしら?」


 現代の科学の根本を否定しかねないニヒルな姿勢の明日川であった。


「私は、そうだと思います」


 現代科学の守護神と化した葉華莉。


「私はそうだとは思えないなぁ。星の距離での誤差の話をした様に確定するまでは、あくまで仮説に留めるべきで、全て暫定的に考えるのが望ましい科学のあり方じゃないかしら。専門家と言う職種に従事すると、想定していた実験結果が出れば、この説は正しかったんだと結論付けてしまうのよね。でもそれは、特定の説に盲信するあまりの自然の仮の姿かもしれないわよ。想定すべきものや実験方法は一つしかないとは限らないのだから」


 明日川もまた専門家の筈だが、その考え方は通常の学者とは大きく外れていた。


「じゃあ主任は、万有引力が重力の正体でないのなら重力の本当の正体は何だというんですか?」


 葉華莉は感情的になり、明日川に当然の疑問を問う。


「万有引力=重力という捉え方は、測定結果が近似的というより、むしろ後付けで結果を合わせたと取らえる見方も必要だと言う事。例えば引力と言っても万有引力とは異なるカシミール効果という現象もあるし、いまだに見つかっていない未知の力が重力の正体かもしれないわよ」


「こういうのはむしろ田中君の様な、偏見も余計な知識の無い人の方が、見つけやすいのかも知れないわね。田中君ならどうやったら重力の正体が掴めると思う?」

 

 ここで出て来たカシミール効果とは、狭い金属板同士に働く引力であり万有引力とは異なる作用と言われている。

 しかし何時もの事ながら、油断していると直ぐ標的にされる田中であった。生徒が少ないから仕方が無いのだが・・・・・・。


「だからって、俺に振るか? それじゃあ、地球の中心近くにでも行けば重力の謎は解明、でいいでしょ?」


「その通りね、全く完膚なきまでの正論です。多分、その正体は身近にある現象と相似で簡単な原理で説明が付いてしまう事でしょうね」


 明日川は、既に《本当の重力の正体》を知っているかの様な素振りを見せ、田中の回答に満足そうに目をつむり、腕を組んで頷いた。一方、葉華莉もその単純明快な田中の回答にしぶしぶ納得していた。


「でも本当に不思議だよな、重力・・・ずっと加速し続けるなら永久機関も可能じゃないの」


 田中がそう思うのも、もっともな事だろう。


「残念だけれど出来そうで出来ないのが重力を使った永久機関よ。中心までは加速し続けるけれど中心を過ぎたら減速するし、加速中にエネルギーを取り出そうとしたら加速度はその分減ってしまうから。もっとも本当の重力の正体も今の所は、わからないけれどね」


「あっさりと俺のアイディアは、明日川先生に瞬殺されたわ」


 そういって笑いながら頭をかく田中。


「では次に運動の三法則について話しましょう。機嫌を取り直して説明してもらえますか、葉華莉さん?」


「仕方ないですね。先ず運動の法則という物理の基本となる法則が三つ存在します」


「一つは物体に外から力を加えない限りそのまま停止を続けていて、それに力を与えて運動を得た物体は等速直線運動をするというものです」


「この等速直線運動というのは、真直ぐな道で速度の変化の無い運動ということです」


「れらをまとめて運動の第一法則と呼び、別名で慣性の法則とも呼びます」


 教科書通りの説明をする葉華莉。 


「えーと、葉華莉先生、質問」


 田中は躊躇いながら質問をする。


「はい、何ですか田中さん」


「止まっている状態から動くのなら、その時は速さが変わるんじゃないの?」


 この会社に来てから少しは賢くなった田中であった。


「大変いい質問です、田中さん。その回答に対して、運動の第ニ法則というものがあります」


「これは運動の第一法則で物体に力を与えると等速直線運動になると言いましたが、与えた瞬間では速度に変化が生じます」


「そしてこの変化こそ加速度です。しかも物体に力を与え続けると速度が無限に増して行きます」


 知っている事柄にはとことん説明好きとなる葉華莉。


「そういった状態を等加速度直線運動と呼びます。その加速度は与えた物体への力の大きさに比例し、物体の質量に反比例します」


 しかし、田中はこの時点で半分付いていけなくなっていた。


「この関連性を式にすると、与えた力Fは質量mと加速度aを掛けたものに相当。すなわち、F=maです。これ物凄く重要なので覚えていて下さい」


 葉華莉は塾の講師の如く、今まで存在が忘れられていた背後のマジックボードにその公式と説明を書き記した。


「F=maですか、何に使われるか分からないけれど、エフの付くマートと語呂合わせで覚えておくよ」


 とりあえず内容よりも頭の片隅にでもあればいいと思い覚える努力をした田中。しかし、エフをちょっと言い間違えると、どこかで聞き覚えのあるコンビニ名と勘違いしそうないい加減さである。


「最後に運動の第三法則というものがあります」


「これは作用反作用の法則と呼ばれていて、他の二つの法則と関連性があります。例えば同じ質量のボールが二つあるとします」


「一つは止まっていて一つは動いているとしましょう」


 葉華莉は、マジックボードにそのボールの絵を描く。


「そして動いている方のボールが止まっているボールに当たります」


 葉華莉はその変化の様子を続けて、ボードに描いていく。


「止まっていたボールの方は最初に加速度を経て等速直線運動をします」


「これは先の運動の第一法則と第二法則で学びましたよね」


「では田中さん、最初に動いていた方のボールの方の速さは衝突後どうなったでしょうか?」


 葉華莉の方から珍しく質問された田中。


「えーと速度が遅くなったのか?いや、反対側に弾かれたのかな?」


「両方とも正解ですよ。止まっていたボールを動かしたという事は、動いていた方のボールの力を相手に与えた事に相当しますので、その分速度が遅くなってしまいます」


 すらすらと描き慣れた様子でボードにその様子を描いていく葉華莉。


「この反対側に弾かれる状態を広義では、与えた向きと反対側に力を及ぼすともいいます」


「では、どのくらいの力で弾かれるかというと、摩擦とか弾性とかいろんな要素を無視して考えた場合、それまで持っていた分の半分の力が失われます」


「即ち最初に運動していた方のボールの方は速度が半分になり、止まっていたボールの方は力を貰って最初に運動していたボールと同じ速さになると言う事です。」


「そして、この時二つのボールは全く同じ速さで同じ方向に進む事になります」


 長々と葉華莉の話が続いたが、それを聞き続けていた田中は自分でまとめ上げた。


「えーと、つまり2+0=1+1みたいな感じですか。なんだか突き合いの法則って感じですね」


 2とは最初に動いていたボールであり、0とは止まっていたボールである。それが衝突により1と1に分かれると言う事だ。


「うーん、いい例えです田中さん」


 葉華莉の反応からして意外と田中は理解していた様だった。


「運動の三法則の説明ありがとう、葉華莉さん。では、ここからこの法則との関連付けで永久機関の説明をします」


「先生、いよいよ永久機関ができるんですか?」


 田中が興奮して明日川に質問する。


「不可能を知り可能を見極めれば、永久機関に辿り着けるかもしれないと言う事。つまり、今日は絶対不可能の永久機関の授業です。一般的に永久機関ができない理由の大きな一つは、この運動の第三法則があるからなのよ」


「作用反作用っていう、力が半分こになる法則ですか?」


 田中は早速得た知識を活用した。


「そう、田中君がさっき例えてくれた、2+0=1+1の自称突き合いの法則よ」


 明日川は突き合いの法則を気に入った様だ。


「では田中君、さっきのボールの例で2+0が1+1になるなら逆に1+1が2+0にならないものかしら?」


「それこそ、りろんじょう可能で二つのボールをまたぶつければいいんでしょ」


「田中さん、それだと駄目ですよ。1+1がぶつかっても1+1のままです」


 葉華莉が田中のミスを訂正する。


「どうして?」


 田中のりろんは理論ではなかった。


「質量も早さも同じで、持つ力も半分になっているからですよ。同じ力を持つ同士がぶつかっても同じ力がきれいに跳ね返るだけですから全く変わりません」


 葉華莉は綺麗に簡潔に田中のりろんにトドメを刺してくれた。


「同じ力を持つ同士では勝負が付かないという漫画でよくあるパターンか。それは厄介だな」


 田中は勝手な解釈で理解し自己完結した様だ。


「まあ、そう捉えてもいいかな。1+1が2+0にはなれない、これが不可逆ふかぎゃくという状態ね。でも、1+1になった二つのボールを別の止まっている二つのボールにぶつけて、例えば1+1+0+0から0.5+0.5+0.5+0.5にする事は可能よ」


 明日川が数字を細かく刻んで調理する。


「でも、全部合わせると2ですよね。結局、最初の2からは変わらないんですか?」


 自分で作った突き合いの法則で、気付かぬ間に物理の理解を深めていた田中。


「良く気付いたわね、田中君。数字の合計が変わらないのがエネルギー保存の法則と呼ばれているもの」

「そして細かくなった数字が元に戻らないのが、エントロピー増大の法則と言ってもいいかしらね」


「エネルギーの法則はなんとなく分かりますけれど、そのエンストピーて?」


 明日川の語る専門用語を必死に覚えようと頭に混乱を来たす田中であった。


「あ、ごめん、ごめん説明が足りなかったわ。基本的に自然界では大きなエネルギーは、より小さなエネルギーへと変化していくものなの」


「ボールの数が許す限り、更に別のボールを突いて行って、元の2という数字が次々に細かく刻まれて行くようにね」


「そして小さなエネルギーがどんどん増えて行って大きなエネルギーに戻らない状態とその限界を差してエントロピー増大の法則と呼んでいるのよ」


「なるほど、ゴミの分別で一度間違ってゴミを別の種類で捨てちゃうと回収するの大変だなぁという感じですね」


 身近な例えで解釈するのが得意な田中。


「そうね。他にも沸騰したお湯と水を混ぜると、ぬるま湯になるけれど、再びお湯と水が分離しない事や、前に見せた水飲み鳥のおもちゃも同じ事よ」

「だからもし、1+1を2+0にすることが出来たなら永久機関、特に第二種永久機関の完成ね」


 田中はそれを聞いて落胆した。


「明日川先生これじゃ、永久機関なんて絶対に出来ないって言っている様なものですよ」


「だから今日は絶対不可能の永久機関の授業って言ったでしょ。ただF=maという運動方程式には永久機関が可能であることも示唆しているのよ」


「へ? 良く分かりませんが」


 田中には明日川の禅問答の様にしか聞こえなかった。


「田中君、永久機関ってどういうものか改めて説明してくれる」


「そりゃ、一度動いたら止まらないものでしょ」


「なら、運動の第一法則で習った等速直線運動で成り立つわね。人工衛星や地球の自転も永久機関になるわ」


「外部に力を与えても元からあった力を失わないのが永久機関ですよ」


 明日川に続いて、じれったくなった葉華莉が説明に加わった。


「そうね、さっきの2+0を例にすると2+0が1+1ではなくて2+2になったりする事よ。

つまり、2が倍の4になる現象ね」


 明日川がマジックボードに書いて説明する。


「つまり、永久機関というのは同じ速度でずっと動いているものではなくて、常にアクセルを踏んで加速しているということですか?」


 田中の自己解釈レベルが上がった。


「その通り、だから永久機関を改めて言えば永久加速機関と命名できるわね」


 明日川が自己満足度98%のネーミングを付ける。


「永久加速機関かぁ」


 恍惚な表情を浮かべ田中もその名称を気に入ったようだった。次に明日川はボードに

F=maの公式を書いて更に説明をする。


「また、F=maの方程式をa=F/mに変えると、加速度は力を質量で割ったものになるわよね。」


「特にこのaつまり、加速度が失われない様に右側を別の式で表す事が出来れば永久機

関も理論的には可能かも知れないわ」


「先生、それでは無理筋過ぎてこじ付けにもなりませんよ」


 葉華莉がそう考えるのは当然な事だろう。明日川の話は現時点において、無限の力Fの取り出し方を全く説明していないので理論破綻していると言えるからだ。

しかし何故、明日川が公式をa=F/mに置き換えてまで説明したのか? 現時点では田中は無論、葉華莉もその意味を知る由も無かった。


「葉華莉さん、それを研究するのがこの会社の仕事よ。永久機関とは一言で言えば失われない加速・・・・・・を作ること、それを忘れないでいて」

 

こうして今日のレクチャーは終わった。



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