第6話 恒星の距離は意外といい加減
次の日の会社も、何時もの場所で何時ものレクチャーが始まる。生徒は、田中と葉華莉。そして本日の講師は
「今日は私、明日川が星の距離についての講義をしたいと思います」
と言う訳でベテランの先生が授業をする事になった。
「一番身近な星と言えば、この地球ですが地球から一番近い星は月です。そして月までの距離は38万キロメートルあるけれど、その月までの距離を最初に測った人は誰から?」
「紀元前のギリシャにいたヒッパルコスです」
それくらい常識と言わんばかりに答える葉華莉。
「はい、正解です。葉華莉さん」
「では、そのヒッパルコスという人がどうやって月までの距離をはかったか、田中君分かるかなぁ?」
「そ、そんな名前の人、始めて聞いたのにいきなり言われても」
一般人でも知らないのが大半だろうが、このエリート達の中ではプレッシャーを感じずにはいられない田中。
「距離を測定する基本は三角関数を使うのよ。中学や高校で習ったと思うけれど、サインやコサインとかを使った直角三角形の特性を利用したもので、90度の場所が必ず一箇所必要で、残りの角度が分かればそれを比率にして分からない距離を導き出せるというものなんだけれど」
明日川がそう掻い摘んで説明しても、困惑している田中の表情を見て、更に工夫した説明をする。
「もう少し分かりやすく言うと、こうやって人差し指を目の近くで見ると、右目と左目では微妙に指の位置がズレているのが分かるわよね」
田中は明日川の真似をして自分でも確認し、うんうんと頷き納得した。
「この様なズレ加減を細かく比率にして距離を求めようとしたのが、三角関数による距離の測定です」
「先生、このやり方だと指を遠くにするとズレも少なくなるけれど、いいんですか?」
いつもの事だが、ちょっとした事にうるさい田中。
「いいんです。むしろそれが今日のレクチャーの最大の要点なのよ。でも、いきなり確信を突くとは、いいセンスしてるわね田中君」
真意は理解してなくても褒められ、頭をかいて照れる田中であった。
「で、いよいよ本題ですが、そのズレを使ってヒッパルコスは、どの様な方法で月までの距離を測定したのでしょうか? 最大のヒントは見た位置が変わる大自然の中のズレですよ」
この質問は田中に向けられたものであり、褒められた事もあって何とか自力で解こうと頭をフル回転させた。
(大自然の中のズレ、つまり自然現象を利用したって訳か・・・・・・例えば月の満ち欠けを右目と左目で当てはめても・・・・・・確か、世界のどの場所でも満ち欠けは変わらなかったんだな。でも太陽のあれって確か)
「先生、分かりました。日食です!」
葉華莉並みに自信満々で答える田中。
「そうよ田中君。大正解よ」
明日川は大を付けて、田中の正解を賞賛した。そして、田中の机の横では葉華莉がニコリと笑っていた。
「日食は場所によって満ち欠けが違のよね。皆既日食の場所を中心とすると、日食の割合が最も少ない場所を一番外側と考えてみましょうか。野球で例えるなら、ど真ん中とストライクゾーンギリギリの場所、サッカーで例えるならゴール内でゴールキーパーのど真ん中と、ゴールキーパーがボールを手にする事ができる、ぎりぎりの範囲の所」
「それ、とっても分かりやすいです。と言う事は、月に対して地球の真ん中と地上すれすれの所ですね」
田中でもこれは理解できたようだ。
「そうして考えた場合、月を軸として中心と外側の挟む箇所ではコンパスの様な形が出来るでしょ? 右手で例えるなら人差し指が地球の中央で中指が地球の外側、そしてその付け根が月ね」
明日川は右手の平の方を田中に向けてVサインをかざし、左手の人差し指で、右手の人差し指、中指、そしてその付け根の部分に、それぞれがここだよという仕草をした。
「つまり、その付け根の開いた角度を調べれば、いいという事ですか?」
「その通りよ、田中君。そしてヒッパルコスは、更に地球の半径を利用し計算したのよ。そして98%という正確性で月までの距離を導き出しました」
天文知識では、自分も負けてはいられないと葉華莉は補足する。
「明日川先生、ただヒッパルコスは日食ではなく月食を利用したのではないかとも言われていますよ」
「流石ね葉華莉さん。確かにそういう説もあるわ。実際、月食の方が頻度は高いからそうかもしれないわね。ただ私としてはどちらにせよ、そういった測定方法を当時に思い付いた事を賞賛したいのよ」
葉華莉の意見はあっさりと明日川に反故にされてしまった。
「そして、今日は早々と次の展開に進めるわよ。月以外の身近な星といえば、今度は太陽や惑星が思い当たるわよね」
頷く田中と葉華莉。
「仮に一番遠い惑星とされる海王星までの距離を現代の技術で三角関数を率いて計算すると誤差は0.1~1%くらいになるのよ。もっとも今はレーザーやレーダー測定とかあるからそんな測定方法に頼らなくてもいいのだけれど、遠くにきらめく星々である恒星を測る上ではこの三角関数を用いた方法が当たり前となってくるのよね」
「先生、恒星を測るにしても遠くの恒星では測定方法も異なると思いますが、光りのドップラー効果での測定とか」
余計な知識が溢れている葉華莉さんであった。
「葉華莉さん、申し訳ないけれど何事も順番があるから、その話はそれはまた後の機会にね」
「はーい」
残念がる葉華莉さんであった。
「で、話に戻るけれど、恒星を測る場合は年周視差というものを利用します。これも結局、三角関数を用いたものなんだけれど、北の空を眺めると北半球では北斗七星などほぼ一年中見ることが出来る星座があるのは知ってるわよね」
田中はさっき褒められた事に味を占めたのか、熱心に明日川の話しに耳を傾けている。
「それらは肉眼で見る限り北極星を中心に回っているだけで、星の位置がズレて形が崩れたりなんかはしてません。しかし、季節ごとに精巧な望遠鏡などで観測すると位置が僅かだけズレてるんですよ。では、葉華莉さん出番です、その説明をお願いね」
待ちに待ったその言葉に葉華莉はご機嫌よく
「はーい、その理由はですね、遠くにある恒星も地球が大きく動いたお陰で微妙な変化を見せるからです。つまり、さっき明日川先生が仰っていた右目と左目で見た差と言うことです」
あっさりと葉華莉の説明は終わったが
「んーまぁいいでしょう、葉華莉さん」
その説明に必ずしも納得がいかなかった明日川であった。
「えー駄目でしたかぁ。ぐっすん」
少し落ち込む葉華莉。
「いえいえ、駄目ではないですけれど、出来れば三角関数の原理を使って説明して欲しかったのよ。遠くにある物の距離を三角関数を使って測る場合、見える対象物に対する角度の差が大きければ大きいほど正確な数値が出せるという事までをね」
「そういう指摘でしたか」
素直に自分の欠けていた部分を反省する葉華莉。
「とは言え三角関数では、90度内が限界なんだけれどね。地球から恒星を三角関数で測る場合、太陽と地球まで距離を利用して太陽を中心として考えるんだけれど。そうだねぇ、ここでと一番近い恒星までの距離って何光年くらいか田中君分かるかなぁ?」
「え、俺に天文は無理ですよ、でも3万光年くらいですか?」
「残念、大外れです。答えは、葉華莉さんに答えてもらいましょうか?」
明日川が葉華莉を指す。
「ケンタウルス座アルファ星までの約4.4光年です。現在のロケットだと10万年もかかってしまう距離です」
「10万年! 世紀がいくつ必要なんだ」
途方もない時間に驚く田中。
「ちなみに光年というのは、光が一年をかけて進む距離で約9兆4600億キロメートルありまして、地球から太陽までの距離を光年で表すと約0.0000158光年で1光年に対して約7万分の一という大きなの差があります」
葉華莉の説明に田中のいつもの素朴な疑問が炸裂する。
「あれ、そうなるとケンタルスの何とかという星を三角で調べる角度って、針の先よりももっと細くならないかな?」
「
明日川のサービスに頬がほころぶ田中。
「ここに現代天文学の欠陥があると言っても過言ではないのよ。さっき、海王星までの距離を三角関数で用いると0.1~1%の誤差が出ると言ったけれど、太陽と地球の距離を1とした時、地球から海王星までの距離はその2倍ちょっとあってね、それを光年に換算すると約0.000032光年、仮に地球から0.000032光年の距離が増えるごとに0.1%の誤差が生じると計算しましょうか、葉華莉さん一光年では何パーセントになるかしら?」
「1光年先では、い、1万パーセントを超えますよ」
ちなみに200パーセントなら2倍、1000パーセントなら10倍、1万パーセントなら100倍となる。なまじ天文の知識のある葉華莉に、この結果は容認できるものではなかった。
「そうね、いくら塵も積もれば山となると言っても、その誤差は大き過ぎと私も感じるわ。ただ三角関数を用いる遠距離の計算では、必ず誤差の蓄積を前提で考えるべきで、現在の優れた精度の観測機器を考慮しても恒星間距離は最大でも9倍くらいの誤差があるのではないかと私は見ているの」
明日川が何処からその9倍と言う数値を捻出したかは定かではないが、流石に100倍もの誤差は現代の科学にも失礼だと思い、また二桁の10よりかは更に遠慮した数値にしたのかもしれない。
「主任、9倍の誤差といったら天空で一番明るい恒星のシリウスまでの距離が8.6光年ですから、それが一光年もない0.95光年の距離になってしまいますよ」
先生というこの場での敬称も忘れ、いつもの地で明日川に疑問を呈する葉華莉。
「その通りで、シリウスまで一光年もないのかもしれないわね。でもその逆で9倍の77.4光年も遠くにあるかもしれないわよ。ただ現在の技術でも、その誤差を縮めることは可能なんだけれど、それを行うにはどうしたらいいか分かるかな、田中君?」
腕を組んで暫く考える田中。
「・・・右目と左目の距離が大きく、つまり大きな角度を得られれば精度が上がるなら、ロケットでも飛ばして土星とか木星とかの大きな軌道っていうか、その辺から星を観測すれば、いいんじゃないかな」
自信がなく、ぼそぼそとだったが奇跡的にも明確な答えを出す事ができた田中だった。少しは成長したのだろうか。
「そうですね、私もそう思います。地球の公転軌道からではどんなに精度のいい観測装置を使っても距離は不確かなままです。所詮、1は1のままだから。1しか基準にできない時代なら暫定的にその距離も容認できるけれど、今は2にも3にも対比の出来る時代だから観測方法を改めるべきでしょうね」
葉華莉はその話しを聞き冷静になり、明日川にそれに対するアドバイスをする。
「明日川先生、それなら探査機は一度に二機飛ばした方がいいですよ。一機では、土星の公転周期では半周するのに約15年かかりますけれど、二機一組にしたら互いに正反対の公転軌道に到達した時に、毎日別の星の距離を調べる事が出来ますから」
「それはいいアイデアね、葉華莉さん」
珍しく明日川から褒められた葉華莉は笑みをこぼす。
「探査機に限らず、人でも組織でも一人や一集団のみってのは価値判断に限界あるよな。自分や自分らこそ正しいって言っててさ。そう考えると、その反対の価値観を持っている存在って重要なのかもしれないや」
田中は、偉そうな結論を導く。しかし、それがこれから先で自分自身への試練となる事を知る由もなかった。
「そうだねぇ、人ってのは多くの人の意見に流されてしまうけど、多数決が望ましい答えとは限らないんだわ。常にあらゆる物事に疑問を持って、全ては暫定的と考えた方がいいかもしれないわね。私の意見も含めてね」
明日川の最後の言葉と共に、今日のレクチャーは終わった。
その後、田中が社内の通路を歩いていると、その隅で田中に手招きしている男がいた。社長である。
「あ、社長・・・・・・なんか久しぶりですね」
意味もなく、やや気まずい感じをした田中であった。
「そうだよねぇ、本当に寂しいねぇ。僕だけ出番が無かったから仕方が無いかな。ところで新しいおもちゃを買ったんだ、いつもの部屋に来ないか田中君?」
田中が自分の腕時計を見ると11時だった。
「でも、まだお昼まで1時間ありますよ」
「硬い事言わない、この会社では娯楽も仕事の内だよ」
その言葉に田中はあっけなく諭され、いつもの社長グッズがひしめく応接間に向かった。二人きりの部屋で、ソファーに座り互いに向かい合う。
「新しいおもちゃというのは、こいつなんだけどね」
それは、カメラの付いたドローンだった。
「今時カメラ搭載のドローンは当たり前だけれど、こいつにはパワーがあってね、しかもドローン同士を連結させて一つのリモコンでコントロール出来き、重い物を運ぶ事も出来るんだよ」
「ひょっとして人も?」
田中は、当然期待して聞く。
「もちろん。それどころか何台でも連結できるから理論上は車に繋げて空飛ぶ車も可能だよ」
「そいつは凄いですね。そのまま宇宙にも行けるんじゃないですか?」
「残念ながらその辺は普通のヘリコプターの限界高度と同じで、高度3~4000メートルが限界だろうね。でもこの連結方式によって、運搬作業での用途が大きく広がると言えるよ」
それを聞き、田中は周りのロボットなどのおもちゃを見て
「ロボットにドローンを取り付ければ、空飛ぶロボットも可能ですね」
「うーん、それも捨てがたいなぁ。でもその前にやりたい事があるんだよね。ヒントはねぇ、この部屋にあるよ」
周りは主にロボットのプラモが陳列している。それを見て田中は推測した。
「分かりましたよ社長、これまでなかった究極のプラモの製作ですね」
「スケールが小さいよ、田中君。僕の夢はねぇ、いつか巨大なロボットを作って乗って皆で遊ぶ事だよ」
それを聞き、田中は暫く唖然としていた。
「社長、スケールは物凄い大きいけれど、やる事は今の趣味と変わりませんって」
「ははっ、そうだね。しかし、そういった事を容易にできたとしたら、この世はどんなに楽しくなるんだろう? 仕事が娯楽の世界だったら何もしないニートなんか、逆に勿体無くてできないんじゃないかね、田中君」
「そんな世界は天国って奴ですよ、社長」
その時、いつもの穏やかな社長の眼差しが鋭くなった。
「その通りだよ、この世を天国にすればいいんじゃないかね?」
「そ、それはそうですけれど」
「永久機関というのは、その為の一つの道具なんだよ。地上から飢えや貧困をなくし、誰も食べる事に苦労しないで生きていける世の中を作るためのね」
さっきのほのぼのとした話と打って変わり、本当にスケールの大きな話に突入した。
「もっとも、それを個人の私利私欲に使えば、人類はその支配者の永久の奴隷になってしまう事だろう。僕はそんなつもりは無いが、最初の発明者がそういった邪悪な者でないとは限らないんだよ」
「でも、誰が発明するか、また本当に作れるかも分かりませんよね?」
田中の質問に社長は
「ただ、日本では永久機関は特許に出来ないから、それで金儲けはできないよ。そもそも永久機関は出来ないとされているから特許認可から外してあるのだけれど、それが出来た際には逆に独占禁止への安全装置として働くのだから皮肉なものだよ」
社長の話はなおも続く。
「また日本国憲法第25条には、すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する、とあるけどこれは、永久機関かそれに近いエネルギー源とも言える無尽蔵の富の源泉でも無い限り理想に過ぎない非実現的なものなんだ」
それに対し田中は、意見する。
「でも仮にも憲法なんだから、法律を作る際にそんないい加減なもの考えないでしょ?」
「この条項は、そうあって欲しいと言う社会の願望を記してあるに過ぎないよ。現在、生活保護でそれを保障されているからと言っても、それは税金を出して彼らを養ってあげられる国民が多数を占めているお陰だからね」
「でも法律だから、絶対に保障をしてくれるんですよね」
田中は法律という壁を必死に支えようとしていた。
「法律など状況で容易に覆るものだよ。例えば、明日国民全体が流行り病にかかり、ろくに働けなくなり税収が少なくなれば、生活保護も減らされるか消えるかは必然となるからね」
社長はその壁を完膚なきまでに打ち崩した。
「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するとは結局の所、田中君が希望しているニートの世界を構築できるのと同意と言えるんだよ」
「それじゃあ逆に言うと、日本国憲法第25条ってのは永久機関があることが前提の法律みたいなものじゃないですか?」
田中は、これまでの話の流れで日本国憲法がまるで永久機関を認めている様な錯覚を感じた。
「まぁ、そういうことになるね。とにかく憲法第25条は今のところ理想ではあるけど、それを本当に実現すべき社会を作る。それが日本だけではなくて人類の目的とするべきだと思うけどよ」
「野望がインフレし過ぎです、社長」
ここに来て社長の話しについていけなくなった田中。
「いやいや、それくらい出来ないと巨大ロボットを作って乗るなんて事は、夢のまた夢だからねぇ。明日川君は、ほぼ人間の労働の代わりをなしてくれるロボットを作ってくれたけれど僕は、いつか合体変形ロボットや、なんとかフィールドを展開させるロボットなどに乗って、みんなで楽しめればいいなぁ」
そうして社長は、田中を越える妄想の世界にに入っていった。その間、田中は暫くケースに入っている模型を眺めていると、コンコンがドアがノックされた。
『社長、今日は私の身体機能のチェックの日ですが・・・・・・』
シーナが尋ねてきた。
「そうだったけかぁ、シーナ。確か今日は、明日川君と外で歩行試験をする予定だったね」
シーナは、何故か水着かレオタード姿という刺激的な出で立ちだった。
「はい、主任と葉華莉さんは外で待っています。田中さんも私の検査にいらして欲しいと言うことです」
「俺も?」
「はい。社長は如何しますか?」
社長は、いきなりソファーに座り背をかがめて重病人の振りをした。
「僕はここで待ってるよ、中年にはあの距離はきついからね」
「そうですか、では田中さん一緒に行きましょう」
そう言って、シーナは田中の手を掴む。
「え? 今、社長がきついって言わなかった」
社長のきついという言葉に警戒する田中。
「それは、若者には通用しない言語らしいです」
「?」
田中はシーナに外に連れられ、そこには何故かジャージ姿と足には運動靴を履いている明日川と葉華莉がいた。
「あれ、二人ともその姿は......まさかマラソンとか?」
「いえ、違いますよ田中さん。この湖の周りをシーナを連れて歩いて一周するんですよ。田中さんもこの姿に着替えてきますか?」
葉華莉が説明した。田中は作業着を着たままだった。
「俺は、このままでいいよ。でも、一周って結構あるんじゃない?」
「大丈夫、たかが14キロ程度よ」
明日川は、困難さの微塵もなく軽く説明した。
「それは結構な距離ですね。社長が断ったはずです」
そこに瞳が暗くなった田中がいた。
「社長ねぇ、最近お腹が出てきたから一緒に行けば健康にもいいのに」
「それより二人とも、まだお昼前だけれど?」
田中が自分の時計を見てみると、時刻は11時20分を指している。
「会社の経費で買った、コンビニのサンドイッチとおにぎりがありますから、外の適当なところで食べましょう」
葉華莉がそういって、サンドイッチとおにぎりを自分のリュックサックに入れそれを背負った。
「では、出発進行」
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