第3話 都会進出計画
親に猛反対されると思っていた私の「都会進出」は何のお咎めも無しに案外あっさり許可された。
ああ、はいはい。みたいな。
あまりに即決すぎたので、しばらく夢見心地に浸かりながら、それでも奴らにトップを取られぬように学業に勤しんだ。
季節はいつの間にか秋になっていて、森の木々が暖色に染まり、散り出す頃にもなれば、担任も「お前なら大丈夫だ。達者でな」と肩を叩くくらいになっていた。
先生、私まだ受験していません。
ちなみに志望校である、桜森高校(サクラモリコウコウ)は比較的新しい校舎で、
制服も可愛いと評判のある高校だった。もちろん東京。
とは言ってもこれらの情報しか私の手元になく、主にどのような学校とか制服の種類なんて知らない。
ただ夢のお母さんに東京の高校に進学したいと告げてみたら、夢と同じところを受けてみればいいと助言してもらったのだ。
だから、夢もこの高校を志望しているらしい。
もちのろん、夢の彼氏も。
この二人は正直どうでもいいのだが情報として一応明記しておく。
とにかく、なんでもいい。
青春を送りたかった。
青春を謳歌してみたかった。
カモン青春
ビバ青春
エンジョイ青春
ちなみに夢はまだ彼と続いているらしい。
近況は嫌でも親の口から飛び出してくるからね。
やればできるという言葉を友達と馬鹿にしていた頃の自分に言ってやりたい。
「私、最強」
❀
受験勉強は『本当に』苦にはならなかった。
みんなはこの田舎から出られないというのに、私は自由に壁を突破する事ができる。皮肉なものだが。
それだけで満足だった。
そう考えただけで力が湧いた。
まぁ、みんな特にここから出る理由なんてないのだから別にという感じもあるのだろうけど。
小学をなんとなく卒業し、中学をなんとなく卒業して。
ここら辺に高校なんて霧ヶ隠高校ぐらいしか無いのだから卒業式でおいおい泣く執必要もない。
無論私も泣いてない。どうせ家はここにあるのだから。
案の定と言っては実に皮肉になるが、推薦枠を獲得し見事合格。受験終了。
みんなが一般受験日までの苦戦を強いられている中、私は優越感に浸りながら
引っ越しの準備を始めていた。
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