第8話
俺たち三人は正座させられ、二葉のお叱りを受けることとなった。
「で、その罰ゲームがこれって?」
「はい、そっす」
当然のように、矛先は俺に向いた。ちなみに、三人とも顔はボコボコだ。
「なにか言うことは?」
「誠に申し訳なく思ってます」
「止めなかったヒロはなにも思ってないわけ?」
「力が至らなかったと存じております」
もう十分以上懺悔の言葉を並べていた。いや、並べさせられていた。
「はぁ……もういいや。二度と私を罰ゲームのネタにしないで。わかった?」
「でも双葉って毎回ネタにされても許すよな」
「バカだなてめぇ、ふーたは構って欲しい上に若干Sだからな、ネタにして欲しいんだよ」
俺の会話に乗ってくる録輔。
「それってなんだろうね、SなのかMなのかわからないね」
更に乗ってくる光啓。男三人、根本は中学のときと変わっていなかった。
「死ね!」
ご褒美のげんこつでした。
「「「ありがとうございます!」」」
怒られたときはこう言うのが決まりみたいなものだ。
「あーもう気持ち悪いな! 私帰るからね!」
走り去る双葉は、微笑んでいたような気がした。
「ったくよぉ、普通マジでやろうとするかよ」
「お前が言い出した罰ゲームだろ! ふざけんなよ!」
「だから言ったろうが! やるとは思ってなかったんだよ!」
「はぁ!? 昔から罰ゲームやらないと川に落としてたくせによ! 全部お前のせいだろうが!」
「んだとてめぇやんのか!」
録輔に胸ぐらを捕まれたが、今度は俺も掴み返した。
「ああやってやるよ! 毎回やられっぱなしだと思ってんなよでくの坊!」
「おめぇがチビなだけだろうが!」
「落ち着け二人とも、そんなことやってたら日が暮れるぞ」
仲介に入ってきた光啓は、なんだか嬉しそうに笑っていた。夕日に照らされて目端が光ったような気がする。
「しかたねぇ、今日は帰る。行くぜヒロ」
元々幼なじみだった光啓と録輔は家が近い。こうやって二つの後ろ姿を見るのが久しぶりで、少し涙ぐみそうだった。
「また愛称で呼べる日は近いかもな」
小さくそう言って、光啓は録輔のあとを追う。
「お前には敵わないわ」
やっぱりお前は俺のヒーローだよ。
一昨日よりも、昨日よりも、間違いなく距離は縮まっている。録輔とも双葉とも、ちゃんと話ができる日も近いはずだ。いずれまた、光啓をヒロと、録輔をロックと、双葉をふーたと呼べるようになるだろう。そう、中学校のときのように。
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