第2話

さてと、今日も目を開ければ我は額縁の中で淡く輝く封印剣の真下で目を覚ました。

魔術で光る球体を生み出し、部屋中へ明かりが届けばこの部屋中にアンティーク。しかも値がはりそうな物ばかり揃っており、我の好み揃い。

住居スペースとしては王へ献上された高級なゴブランの織物。その畳一畳分の織物を敷いただけのこじんまりとした場所だが、金貨の入った袋を枕代わりに使うだけ。庶民からすれば贅沢な事か。

ちょっとした読書をするにはもってこいのくつろぎスペースだ。

実体化しておらぬ仮の姿な我は空腹感は無いものの、きっちり眠気はするのだ。今が何日で何時なのかは分からない。この場の時計などとうに時を刻む事はなく、外の世界でようやく時間だけ分かる程度だ。

外へ向かおうとも考えたがちとまだ眠い。

しかし『今回』は何かおかしいな。騒がしい時はあったが、これ程の騒音と何かを叩きつける気配は初めてのことである。

妙だ。

そう思えば、足音が近づく気配もしなくも無い。気のせいかと我は再び眠りにつこうとまぶたを閉じたはずだった。

が、そうにもいかなかった。何せ動かぬはずだった扉が勢いをともなく開かれたのだから。



何が起こってるのか、身体が、脳が、付いてこれなかった。

今、自分が置かれている状況も同じく。

分からない事尽くし。

ただ唖然とされるがままだった。

自身では何も出来なかったのが正解。

ああ何て私は無常なのか。

地位など無意味。追われる立場になろう物なら全て皆同じなのだから。

「カイル様!ここにおったんか!」

自室から出て角を曲った廊下で後ろからクレスに声をかけられた。振り向くと険しい顔をしたクレスがぐわっと私の腕を掴んだ。

息が荒く、ただ事ではないのが分かった。

その程度しか分からなかった。

不意に爆発音が響いた。

音のした方角を見れば、コの字状の城の城壁が砕け落ちる様を見ていた。

とたんに私は何だこれは。

そうとしか思えなかった。

「カイル様、落ち着いて聞いてや!城は今、隣国コルトベイルによる攻撃を受けておるんや」

コルトベイルと言えば父上、国王の親しい友が統治する国でそんな攻撃される由縁も無い。

先月も宴が模様されるというので来日したばかり。

なぜ攻撃を受ける由縁など見当もつかない。

「カイル様、わいらは国王様によって言づけを頼まれとる。地下の宝物庫に迎えと言われて来たんや」

彼の他に術師が数名。皆が位の高いとされる青い衣服を身に付けている。少ないながらも精鋭部隊が揃っていた。

宝物庫へ迎えと言う言葉でようやく私は今現在の状況が分かった。幼い頃から父上におとぎ話の様に聞かされていた話しがある。


地下の宝物庫には災いから守るとされている宝剣が眠っている。


そう言う話しだ。

宝物庫に献上される剣なんていくらでもあるけその宝剣は異彩な雰囲気を放っていて。

父上から1度だけそれを見せに連れられたけど、シンプルな物だというのにとても美しい。今でもあの一振りの剣を忘れられずに父上は引っ切り無しに見に通っている。

強烈な印象を受けた父上は私にも見せた事があると言っておられたが覚えていない。たぶん物の価値も分からないほど幼い頃に連れられたので理解して無かったのだと思う。


地下の宝物庫の道のりは長かった。私が王宮の一階に居たからましだった。

幾度となく数名の敵の騎士に遭遇し、何とかやり過ごすといった感じ。

後もう少しで目の前の地下室の扉に着く際にとうとう背後から多くの敵襲を受けた。

こちらより明らかに敵数が多い。何とかこの精鋭部隊で押し切ろうとしてたけど、均衡が崩れるのも時間の問題になってきた。

「クレス、王子を連れて先に宝物庫へ急げ」

騎士の一人がそう言った。そんな彼は甲冑のつなぎ目の布地が切り裂かれて血がにじんでいた。

「カイル様はようこちらへ来るんや、地下に行くんや」

「しかし皆が!」

「ええんや!皆はんの頑張りを無駄にしたらあかんで!」

残す事となる皆の事が心配で頭が一杯だったけれど、クレスに背中を押されたまま地下室へ向かった。

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