第14話 --1章 仲秋 Ⅱ--

はっきりと思い出した。


連れ去ってるじゃん、私……。


しかしタクシーに乗った後の記憶はまったく出てこなかった。


腰まである長い髪を結わいて、ファンデーションを塗りたくりながら煩悶する。


いったいこの少年は誰で、いったい幾つなんだろう。


洗面台を抜け、もう一度少年を見遣った。


布団からのぞく寝顔は中学生くらいにしか見えなかった。


そうだとしたら15も超えていない。


犯罪ではないのだろうか、これは。


今までどれだけ酔っ払っても記憶をなくすことはなかったのに、昨夜の記憶だけはどうしても思い出せない。


なにか後ろめたいことをしでかしてしまい、罪の意識から深層心理で覆い隠しているのだろうか。


いつものようにパンスト姿でクローゼットを漁るような真似はせず、慎ましく彼に見られないように部屋の隅で隠れるように着替えた。


彼が起きる様子はなかった。


私は出勤する準備を終えたところで冷静に考え直す。


この状況は会社に行っている場合なのか、と。

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