第7話 --1章 仲秋 Ⅱ--
高々と上げられたジョッキから泡があふれる。
「かんぱーい」
「おっとっとっと」と、私はジョッキの半分ほどを一気に飲み干した。
「うまーーーい」
仕事上がりの一杯って、どうしてこんなに旨いのだろうか。
「たまらんすなあ」
香山さんが鼻の下にたっぷりと泡をつけて目を細める。
今夜一緒に飲んでいたのは会社の後輩である進藤真琴と香山映子、伊藤孝則の4人だった。
「お疲れー」
「ほんと疲れましたね」
「支店長なんかこんな忙しいのに隠れてゲームしてんの。
見てるだけで腹が立つからさっさと帰ればいいのに」
「建前だけで残ってんじゃーねっての」
みんな同じ支店に勤務しているから、話の種は大体いつも職場の愚痴になる。
愚痴というのは言いだしたら止まらないもので、自分のミスは棚に上げて誰がどうだと言いあった。
主に話題になるのは優柔不断で事なかれ主義の支店長か、仕事しないで嫌みばかりの野島さんで、どちらも悪評には事欠かない。
築地から毎日取り寄せているという新鮮な魚をつまみに、私たちはビールと日本酒を交互に飲んだ。
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