肆 ‐シ‐
四時限目の授業が終わると同時に、一人の女子生徒が玲花に近づいてきた。
その生徒の動きで、
「ねぇ、藤杜さん。ゆっくりお話をしたいの。一緒にお昼、食べましょう」
楓はにっこりと笑いながら、
「……え?!」
「さぁ、行きましょう」
楓は宣言すると、状況が飲み込めていない玲花の手を引っ張って立ち上がらせて、そのまま教室を出た。
……ちょっと待って。
引き留める
「どこ行くの? 九条さん」
「学生会室よ。あそこなら
玲花の隣にくっついて歩く――逃さないという意思の表れか――楓は、ジャケットのポケットのスマートフォンを取り出して、何か操作を始めた。
どうして、関わりを持とうとするのだろう。
楓の
引っ越してきたばかりの、
四階の渡り廊下を通り、管理棟内に入って廊下を右に曲がった。楓に先導されるまま、玲花は四階の突き当たりまで歩を進める。
朝、隆弥に引っ張られて来た場所だ。
「さぁ、どうぞ」
「失礼します」
入室の断りを入れて、玲花は学生会室に足を踏み入れる。
「いらっしゃい、藤杜さん」
学生会室の奥から歓迎の言葉で出迎えたのは、雅紘のソフトな
「ナイスタイミングですね、楓さん。今さっきデリが届きましたよ」
「それは、よかった。藤杜さん、そこのソファーに座って」
楓に
年下の楓に対して、
例えば、年下の主に仕える
玲花は楓と雅紘の
……この二人は、どんな関係なんだろう。
力任せに扉が開き、隆弥が姿を見せたことで、玲花の思考が中断した。
「何だよ、オレが最後かよ」
隆弥は不満げに呟きながら室内に入ると、玲花の対角線に位置するソファーを陣取った。
「全員
玲花の横に腰かけた楓がそう告げると、雅紘が応接セットのテーブルの上に人数分のプレートと、パンの乗った皿を置いていく。
「あの……どうして、わたしを誘ったんですか?」
せっせと
「藤杜さんに興味があったからよ」
はっきりと告げられて、玲花は視線を隣へ移すと、長い
「詳しい話は、のちほど。先に食べましょう」
「そうね。藤杜さん、召し上がって」
雅紘の言葉に頷いた楓に勧められて、玲花はテーブルに視線を戻すと、楓の前に座る隆弥が
「
たっぷりのサラダにハムとパテが乗ったプレートに、玲花はそっとフォーク持った手を伸ばして、目に入ったキャベツのザワークラウトを口に運ぶ。
「……おいしい」
「お口に合ってよかった。ゆっくり召し上がって」
ぽつりと
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