肆 ‐シ‐
隆弥は足早に管理棟の四階へ上がり、学生会室のプレートを
「朝から元気だね」
足音を響かせる隆弥に、重厚な机の向こう側から声が投げられた。
穏やかな口調と、柔和な表情。ふわっとした髪にやや丸みを帯びた顔が、
「色んなモンに邪魔された」
会長席に座る従兄の雅紘を
「邪魔をされたの? 何に? 何をしようとしたの?」
隆弥の言葉を拾ったのは、学生会会長の机の正面にある応接セットのソファーに腰かけている少女。
「風に。風が
隆弥が視線を巡らすと、女子生徒――
「確かに、今日の風は今までと違って、ざわついているね。何ていうか……はしゃいでいる感じかな」
「
雅紘の
それなら、今までも何度もあった。その時は、これほど空気を変えていない。
今日の風は、嬉しいという気配ばかりが
その理由は……?
「そいつ、うちの女子生徒だった。見たことのない顔」
伝えていない内容を隆弥が口にした瞬間、一斉に二対の目が隆弥に向く。
「うちの生徒? しかし、朝凪姓はいないよ」
「じゃあ、何者だよあの女」
驚きを帯びた雅紘の声に、隆弥が
「その生徒については調べる必要があるみたいね。また会えたら必ず接触して、ここに連れてきて下さいね」
考え込む様相から満面の笑みに切り替えて、楓は二人に向かって
「わかりました」と、雅紘と隆弥が同じタイミングで、口調を
「それで、隆弥。その子は、どんな感じの子なの?」
楓から隆弥に視線を移動させて、雅紘が
「普通なカンジ」
「何、それ。もっと具体的に説明できないの? 背が高いとか、ポッチャリしてたとか。髪が長いとか、タレ目とか……色々あるでしょ」
即答した隆弥に、楓は
「うるさいなぁ。印象が薄いんだよ。……茶髪が意外なイメージしか残ってない」
責められている雰囲気に納得できなくて、隆弥は言い放つ。
「仕方ないだろ。摑もうとするとスルっと逃げられる……そんな感じ」
その言葉を聞いて、楓と雅紘は視線を
印象に残らない、と隆弥は言う。
そこに何かの
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