弐 ‐ニ‐
九条学園高等部の正門前に到着した時、
坂の下から吹く風に、喜ぶ
こんなに
……何だコレ。今までこんなコトなかった。
隆弥はわずかに
ざわめきに似た大気の流れが、まるで
数メートル坂を下りた所に立ち止まる一人の女子。
長いストレートの髪は明るい茶色。
隆弥と同じデザインの制服を着た少女は、頭上の桜の木々をじっと見つめていた。
朝日を浴びて、女子生徒の周囲が光り輝いて見える。
まるで、スポットライトだ。
自分の
――…………。
誰かの声が聞こえた気がした。
その直後、女子生徒は笑みを深くした。
その
風……もしかして……。
隆弥が思いついた時――
不意に女子生徒が振り向き、隆弥と目線が合う。
ざわり。
背筋が
隆弥と少女の間の空気が動くと同時に、
何だ? 今のは……。
ざわつく風がやみ、視界がクリアになる。
不思議そうな女子の
風に
差し込まれた直感に、隆弥の鼓動が大きく鳴る。
風が通り抜ける。
肌を刺す
明らかな意志。
邪魔をされている気がしてならない隆弥は、舌打ちをしながら着信画面を操作した。
「何?」と
『どうした? 隆弥』
隆弥の語気から異変を察した相手が返す。
「別に……後で話す」
何でもない、と続けようとしたが、瞬時に別の言葉に変えた。小さい頃からずっと一緒にいた相手に取り
『わかった。学生会室にいるから、今からおいで』
「今から、行く」
即答して通話を切り、身体の向きを変えて目的地に向かうため歩き出した。
『何か』が、女子生徒との接触を
そう自分に言い聞かせながらも、隆弥は
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