第6話 嫌われ者の3人
「では、授業はこれまでです! みなさん! 明日から魔術競技大会、全力を出して頑張ってください! 皆さんに幸運を!」
教師がそういうと大教室のどこからか大きな拍手が起きた。その後のチャイムと同時に生徒たちはどばぁっと教室を出る。
ジレット・ベルレアンも、大多数の女生徒と同じように教室を足早に出た。
これで今日の授業は終了。おそらくほとんどの生徒が部屋に戻って明日からの競技大会に胸を躍らせるのだろう。
「……後1人、か」
ジレットはそう1人呟きながら、部屋へと向かう。
魔術競技会は三人一組……組同士がそれぞれ対抗戦を行い、二回勝ち越した時点で勝った組の勝利となる。
だが、ジレットとデンゾウ……アルピレーナ学院の2人の男子生徒には、現在の所出場規程を満たすことさえできていない。
このままでは指を加えて、女達が自分たちに見せつけるように戦っているのを見ていることしかできないのだ。
「……出場さえ、できればなぁ」
「そこの……男子」
と、早足で部屋へと向かうジレットの背後から声をかけてくるものがいた。
振り向くとそこに、立っていたのは、黒い長い髪に、辛辣そうな険しい表情をした少女……アンナ・アディントンであった。
「……アンタか」
アンナを見て、ジレットはニヤリと微笑んだ。アンナは真剣な眼差しでジレットを見ている。
「なんだ? 俺に何か用か?」
ジレットがそう訊ねると、アンナは真剣な眼差しでジレットを見る。
「私の心は……決まりました」
「そうか。そりゃあ、よかった。で……どうするんだ?」
そんなアンナを見てジレットはニヤリと微笑む。アンナは唇をきゅっと噛み締め、ジレットを見る。
「……アナタ達に協力致します。魔術競技大会に……参加しましょう」
「……よし。決まりだな……あ! おーい! デンゾウ!」
と、ちょうどそこへ、デンゾウが通りかかった。ジレットが大きな声でデンゾウに呼びかける。
「おお! ジレット殿と……貴女はアンナ殿! もしや、アンナ殿……」
デンゾウが訊ねると、アンナは小さく頷いた。
「そうですか! これで我々も魔術競技大会に参加できるというわけですか!」
「ああ。学院長もこれで文句は言えまい。さっそく参加の旨を表明しよう」
ジレットとデンゾウは完全に盛り上がっている。しかし、アンナは不安そうな顔で2人を見ていた。
「あ……あの……」
「ん? なんだ?」
ジレットがアンナのことを見ると、アンナは伏し目がちに2人を見る。
「……勝てると……本気で勝てると思っているのですか?」
アンナのその言葉にジレットとデンゾウは顔を見合わせる。それから、二カッと微笑んで二人してアンナを見る。
「分からん。やってみないことにはな」
「え……そ、そんな……」
「しかし、アンナ殿。やらなければ我々は負け犬のレッテルを貼られたままです。ここらで一つ、我等をバカにした奴等に仕返しをする時では、ないのですか?」
アンナにとっては、ジレットとデンゾウの自信満々な様子は信じられなかった。
しかし、不思議と、2人が言うように、勝てる……アンナも心のどこかでそう思っていたのだった。
「……分かりました。頑張りましょう」
アンナも2人に併せてそう言った。
ここに、魔法世界から嫌われた三人の、一大下克上計画が開始されたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます