第3話 魔法世界とジレット・ベルレアン
「ふふっ。ってことは、明日から『魔術競技大会』かぁ……大丈夫かなぁ? あたし達」
授業中だというのに完全に浮き足だっている短めの髪の女生徒が右隣の、大人しそうな女生徒に話しかける。
「う、うん……ちょっと心配だよね。私、決闘とか怖いな……」
「あはは! ブリジットは心配性だねぇ。私なんかもうウズウズしちゃってしょうがいないよ」
「ゆ、ユリア……あんまり危ないことしちゃダメだよ?」
「大丈夫だって……なぁ、お前はどうなんだよ? ジレット」
「……あ?」
髪の短いユリアと呼ばれた少女が話しかけたのは左隣の生徒だった。
明らかに愛想のない目付き。感じの悪そうな表情。
そしてへの字に曲がった口元。
陰気な感じの少年は少女に対し怪訝そうな顔を向ける。
「だから、明日からの魔術競技大会だよ。あれって、部屋別対抗だろ? アルピレーナの男子コンビはどこまで勝ち残れるのなかぁ、って」
「……知るか。大体競技会には三人一組でないと出場できない決まりだろ。お前、俺達が出られないこと、知っているだろうが」
ユリアは馬鹿にしたようにニヤニヤと微笑む。もちろん、ユリアもわかっていてそんな質問をしたのだ。
しかし、ジレットと呼ばれた少年は感じ悪くそれだけ言うと、なにやら先ほどから眺めている小ビンの中に目をやっている。
ユリアが不思議そうに小ビンを見ようとする。
「何見ているんだ?」
「あ? お前に関係ないだろ?」
「なんだよ~、見せろよ~」
「あ、お、おい!」
と、ユリアは咄嗟にジレットの小ビンを掻っ攫う。
「……うわ。なんだこれ」
ユリアは顔をしかめて小ビンの中を見た。
小ビンの中に入っていたのは小さな虫だった。
虫といってもミミズのようなムカデのような、どちらにせよ見ていてあまり気持ちのいいものではない生物が入っていた。
「返せ」
ジレットは乱暴にユリアから小ビンを奪い返した。
「なんだよ……お前それまた持っていたのか。気色悪いなぁ」
「……ああ。コイツは俺に残された、最後の1人の家族だからな」
そういってジレットは満足した殿子で再び小ビンの中をのぞいている。小ビンの中の虫も心なしか嬉しそうにジレットを見ているようだった。
「……フンッ。ま、アンタ達男2人に協力してくれる、奇特な女子がいるといいわね! もっとも、そんな女子、この学園にはいないと思うけれど!」
わざとえらしくユリアはそう言った。ジレットはじろりとユリアのことを見る。
「……フッ。そうだな。もし、奇跡的にそんな奴がいて、俺達が魔術競技会に出れば……お前なんて一瞬で圧倒できるからな」
「はぁ? 男の魔術が女の魔術に勝てるわけ無いでしょ? ねぇ? ブリジット」
ユリアはそういってブリジットに話しかける。
「う、うん……そうだね」
ブリジットもユリアの意見に賛同した。
しかし、ブリジットは見ていた。ジレットが不気味に笑っている。
ジレットのその笑みに、臆病なブリジットは、どこか不安を感じていたのだった。
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