第2章 第1話 悟編〜プロローグ〜その瞬間は思っていたよりも早く訪れた。


その瞬間は、思っていたよりも早く訪れた。


朝食は明るく、何事もなく食べ終えた。



昼食もだ。



久々のたわいもない会話に、身にしみる幸福感を感じていたところだった。





俺が忘れかけていた瞬間。



夕食は俺が作るから、と言って、手早く野菜多めの野菜炒めを作り終えたところだった。




俺の向かいに座った悟は、急に改まったように姿勢を正し、頭を下げてきた。





「今まで本当に、迷惑ばっかかけてごめん」


弱々しい声だった。



急になんだ、とさすがに戸惑ってしまったせいか、場に非常に重苦しい空気が流れたのがわかった。



それは悟も感じたようで、急いで頭を上げて



「飯、食いながらでいいから、さ。その・・・俺の、話。聞いてもらっていいかな」



そういった。



別にそんなに悪びれることはないと思うのだが、こういう風にしないと、悟の心のモヤモヤは消えないのだろうと割り切って



「勘違いしないで欲しいのは・・・俺、別に怒ってるわけじゃねぇってことな」


「あ、ああ。それは・・・ありがとう。本当に、申し訳ない」


「いや、だからいいって、謝らなくて。その・・・昨日ので、ほら、お前の気持ちっつーか、なんつーの?そういうのがわかった気はするから」


「・・・ありがとう」


「いいよ、話して。それで悟が軽くなるなら」


「軽くなるかはわからねぇけど、話さないと気はすまねぇから」




そういって、オレンジ灯の下で暖かい食事を囲みながら、聞きたくもなくなるような話を悟は始めた。







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