第19話 好きすぎて・・・

「昨日のお前、最高だったぞ」


うん。なんだか妙に嬉しかったりする。


あれだけめちゃくちゃにされたことを思い出しはしたがそれもまた俺にとって最高の瞬間だったのだろう。


「でも・・・最後の方ほんとに何も思い出せないんだけど」


「そりゃあお前、最後イった後失神してたぞ?本気で心配したんだからな?あの後」


そうはにかみながら、いたずらっぽく言ってくる悟がなんだかすごく可愛かった。


「わ、悪かったな・・・うっ」


突然頭に痛みが走る。


「大丈夫か?まだ頭痛むのか?」


「慣れない酒をあんなに飲んだら、そりゃあ・・・」


これは本格的に二日酔いだ。


今日は・・・土曜日。よかったぁ、学校までには万全の状態でいれそうだ。



・・・学校、か。


結局鈴木先生って何者だったのだろう。


聞きたい。


あんまり触れないほうがいいような気はする。


それに昨日、なんの抵抗もなく俺にあんなことやこんなことをしてきたから、一応・・・


それでも、ただの女タラシ・・・っと、男タラシ(?)なだけかもしれない。


つーか、多分鈴木先生ともヤってるよな、悟。


別に気にしはしないんだけど(ここまで来ちゃったから)、鈴木先生に反感を買われたり、俺のせいで二人の仲が崩れてしまうのは本望ではない気がする。


・・・恋仲だったのなら話は別だが。


まぁ、今わざわざ聞いて、このほんわかムードをぶち壊すのはどうかと思うから、悟から話す時まで待っておこうか・・・


それに昨日だって、「鈴木先生のことは後で話すっ!」的なこと言ってたきがするし。



「・・・飯。久々に俺、作るよ」


「え?」


「ずっと、迷惑かけてたしな、俺のせいで」


「べ、別にそんなこと・・・」


「いいや、負担かけてたのは事実だし、俺の気が済まないよ、このままじゃ」


「なら・・・お言葉に甘えて」


悟がうちの飯を作るのは、もう何年かぶりの話かわからないくらいだ。


それでもまだ腕は多分健在。


ということは、どこかで手料理を振舞っている、ということになるってことで・・・


おいおい!なんでさっきから俺はこうもネガティブなんだっ!


せっかく悟は、楽しそうにしてるっていうのに・・・



やっぱり心のどこかにひっかかりがあるせいで、どことなく不自然な雰囲気だ。


それも悟は絶対に感じ取っているはず。


こんな空気を作ってしまっていること自体、悟にとっては迷惑なことだとわかっているけど・・・




・・・台所の方から、美味しそうな音がする。


匂いもだ。


これは・・・悟の得意料理の匂い。


油を使いすぎじゃないかってくらい使ったチャーハン。


あの頃は、なんでこんなに美味しいのかわからなかった。


油でギトギトになるはずなのに、驚くほどあっさりしている。


あぁ・・・いい音。


凄く、懐かしい音に感じられた。


ただ、チャーハンを炒めているだけの音が、心地よかった。




もう随分使ってなかったチャーハン皿に綺麗に盛り付けて、仕上げに紅生姜を添えてテーブルに並べた。


「久しぶりだな。こうやって俺の料理を二人で食べるの」


「・・・そうだね、ほんと、久しぶり」


「寂しかったんだろ?」


「かっ、からかうなよ!お前のせいだろ?」


「ははっ、まぁ、そうだな」


たわいもない会話が、本当に幸せに感じた。


笑って話をしている悟を見るのは、いつぶりなんだろう。


「んじゃ、いただきますっと・・・」


そう言って悟は豪快にチャーハンを頬張った。


それにつられるようにして、俺も口に運ぶ。


「あっ・・・これって・・・」


「ん?どうかしたか?」


米油、使ってたんだ。


だからこんなに油を使っても、あっさりしてて・・・


体にも気、使ってくれてたんだ・・・


そう思うと、自然に涙が溢れてきた。


「おいおい、なんだよいきなり、マズかったか?」


「そんなわけ・・・」


「はぁ・・・。泣くなよ、悪かったって。遅くなって、ゴメンな」


「うん・・・」


涙が止まらない


「悟・・・」


「ん?」


「ありがとう。本当に」


「なっ、なんだよ!急に改まっちゃって、恥ずいだろ?」



ありがとう。


やっと言えた。


素直なありがとうを、やっと悟に伝えられた。


「ほら、冷めちまうだろ?さっさと食え」


「う、うん!」



もう全部忘れよう。


今が楽しければいい、そんな都合のいい言葉がある。


嘘じゃないんだな、と改めて実感した。


好きすぎる。


過去は過去だったんだ。そう割り切って・・・



悟の過去は、悟が話したくなって、俺に悟から言ってきたら。それでいいや。



悟。やっぱり俺、お前のことが好きすぎてたまらないみたいです。




暖かい日差しに包まれながら、二人の暖かい食事の時間を過ごせたことが


自分たちの第一歩を踏み出せた気がしてたまらなかった。






〜後書き〜

これで、第1章プロローグは完結・・・?です!

ここから2章3章と、悟の過去や、二人のこれからについてがどんどん明かされていきます!

みなさま今後とも是非、悟×優太を末長く暖かい目で見守ってやってください(笑)

これからもいろいろ事件が起きたり起きなかったり・・・?



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