第18話 俺の知らない昨日の夜(5)

「い、挿れる・・・のか」


「ああ。お前も、欲しくてたまらなそうな顔してる」


欲しくてたまらないって・・・


実際、挿れられたい。


でもどれくらい痛いのかわからないから、悟に迷惑をかけてしまうかもしれない。


されたことはもちろん、アナニーすらしたことない。要するに・・・新品モノっつー訳で・・・


「そんなこわがるなって・・・ちゃんと、優しくしてやるから」


優しくとか・・・言うなよ。


俺がそんなこと言われたら、どうしようもなくなることくらい、知ってるだろうに・・・



本当に、やな奴だ。


本当に変態だ。


でもやっぱり、どうしようもないくらい、こんな奴が好きな俺も・・・


「い、痛くしたら・・・ゆるさねぇからなっ・・・」


「わかってるって、しっかり解してやるから」


そう言って、容赦なく中指を俺の中に入れてきた。


「うわっ!ちょっ!まだ、心の準備が・・・」


「お前の心の準備待ってたら夜が開けちまうっつーの、黙ってされてりゃいいんだって」


長い指が、俺の中を鋭く掻き回そうとする。


それに本能的に抵抗するように、体をよじらせて、悟の指を締め付けていく。


「痛ってぇ・・・そんなに締めんなって言ってるだろ?」


「締めるなって言われても・・・あぁっかっ、勝手に・・・」


それでも悟は搔き回す力を緩めようとしない。



流石の俺も慣れたのか、されるがままにどんどん緩んでいく。


なんとも言えない快感が俺を包んでいるようだった。


気を抜いたら、寝てしまうんじゃないかってくらい・・・



「優太・・・お前、まじでかわいいわ」


突然、改まったように、真顔でそう言い放った悟に、なんだか意地の悪いことをしてやりたくなったけど・・・



そんな俺のちょっとしたいたずら心を引き裂くかのように、強烈な何かが俺を襲った。


それは、一言に例えられない、そんな何か。


「あぁぁっ!!・・・んっ・・・はぁ、はぁ、」


俺の意思に反するように、声が出てしまった。



「あぁ、ここかぁ、お前の好きなトコ」


「うっ・・・な、なんだよっ、これ・・・」


「余計なこと考えてなくていいから、感じてればいいんだって」


そう言って今度は、そこばかり搔き回す。


「あぁっ!もう・・・無理だって・・・!!」


「なんだよ、もうへばったのか?ははっ、さすが初めてなだけあるな」


意地悪な笑みを浮かべて、そう囁いてくる。


くそぉ、俺が・・・仕返ししてやろうと思ったのに・・・



・・・もう、無理だ。


これ以上こんな刺激を与えられ続けたら


・・・壊れちゃう!!



「指・・・また増やすぞ」


「は、はぁ?正気かよ?もう、無理だってば!」


「大丈夫、心配すんな、痛くはしねぇって。実際、気持ちよさそうにしてんじゃん?」


「だ、だからって・・・これ以上やったらダメだって!」


「ダメじゃないだろ?それとも、キツイまんま挿れられたいのか?」


「そっ、それはダメ!痛いのは嫌だって!」


「なら、大人しくほぐされてればいいんだよっ」



そう言って、ゆっくり薬指を挿れてきた。


「んっ・・・ふっ・・・」


さらに一本増えるだけで、こんなに違うなんて・・・


さっきまで二本で掻かれていた所を三本、四本で掻かれるというのは、単純に考えれば快感は二倍以上ということで・・・


「まだ、余裕ありそうじゃん」


「はぁ!?あるわけねぇだろっ!」


「嘘つけ、足りなそうな顔してんじゃん」


「もう・・・十分だってば・・・」



ダメ・・・壊れる・・・


それ以上増やすのは・・・ダメ・・・



四本目が、ジュブジュブと音を立てながら俺の中に入ってくる。


本当にもう、限界だった。


「やばいって!ダメッ、あぁっ!」


強烈な快感をずっと与えられ続けて、達してしまった・・・



「なんだよ、まだ挿れてないのに二回もイっちゃったんだ」


「さっ・・・悟がダメだっていうのに増やすか・・・んっ!」


「・・・本当かわいいな、お前」


そう言って、俺の言葉を遮るように右手を俺の口の中に突っ込んでくる



舌を引っ張ったり、悟が指に自分の唾液を絡めてると思うだけで、


死ぬほど熱い。


熱い。


体が熱い。



こんどは体を前に回して、俺と目を合わせてくる


そして、少し笑って


顔を大きく近づけて、唇を重ねてきた


指を絡められるよりも、舌を絡められる方が興奮する


やばい、酒・・・入ってるんだった


頭が痛い


体が熱い


頭が割れるように痛い


体が焼けるように熱い



でも・・・、、


最後まで・・・したいんだって!


俺の体・・・持ってくれ・・・!!





もうほとんど、悟が何を言っているかわからないくらいになっていた。


めちゃくちゃにされて喜んでいる自分が、恥ずかしいなんて感情すらどこかに忘れてきてしまった。






「・・・ もう、十分かな」


「へ・・・?」


「もうさすがに、慣れただろ?」


「いや…まだ無理だよ、絶対」


「お前がまだ十分じゃなくても、俺がもう限界なんだよ、もう指増やせねぇし」


ガサガサと音を立てて、姿勢を正して・・・


「こっからが、本番だから」


そう言った。


もう無理だ。


「うっ・・・がぁっ!」


硬くて大きいものが、ついに俺の中に入り込んできた。


異常な感覚に、息が鋭くつまる。


意識も朦朧としてる中、息苦しくてたまらない。


「まだ・・・痛かったか?」


「はぁっ、はぁっ・・・」


「痛くは・・・ないみたいだな、よかった」


何がいいのだろう。


確かに痛くはない。痛くはないけど・・・


その瞬間、悟が激しく俺を突き上げる。


「あぁぁっ!む、むりっ!」


さすがに声が出てしまった。


「なんだよ・・・止めて欲しいのか?こんなに欲しがってるくせに・・・」


痛いところをつかれるとはこういうことだ。


されたくてたまらない。


たまらなく悟が愛しい。


だからこそ、経験不足な自分に腹がたつ。


自分だけじゃなく、悟るまでもを不快にさせてしまうのなら、いっそのこと・・・


「俺のことはっ、心配しなく、て、いいからぁっ!」


「・・・え?」


「失神・・・する、まで!んっ・・・あぁっ!気持ちよく・・・してぇっ!」


これが俺の本心だったんだろう。


この一言がずっと言いたくてたまらなかった。



近くて遠い、一番愛しい人。


やっと想いを伝えたことで、近くて近い人になれればと、切に願う。


「そうか・・・じゃあ、遠慮・・・しねぇぞ?」


そういった悟は、一層強く俺のことを突き上げる。


熱く太いモノは、俺に限界以上にまで快感を与えてきた。


悟の顔もなんだか紅潮している気がした。


悟も悟で、満足してくれているのなら俺は・・・


「あぁぁっ!イ、イっちゃうっ!」


「お・・・俺・・・もっ、もう・・・!!」




























静寂な夜の、小さな部屋に。


二人の男の喘ぎ声と、体を突き上げる音だけ響く中。


二人同時に果てた瞬間。




そこで俺は、倒れてしまったのだろう。



もう記憶をそれ以上遡ることはできない。



これが俺たちの、一番最初の夜。


悟はもう経験したかもしれない。


俺はもう、諦めていたかもしれない。



それでも、お互いの初めてが成立した瞬間。



もう悟も家に寄り付かなくなることがなくなるといいな。


・・・というか、早く帰ってこいよ・・・バカ。


寂しかったんだぞ。ずっと。





これからはずっと一緒にいたい。


それは共通の願いである。


共通の願いであるがゆえに、必ず叶う願いなのである。





「俺の知らない昨日の夜」は


「俺の全ての始まり」になった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る