第17話 俺の知らない昨日の夜(4)

「俺の部屋、最近全然入ってないよな」


階段でそう悟が切り出した。


「だって・・・悟が入るなって言ってたじゃん」


嘘をついた。入ったなんて言えない。ここで機嫌を損ねてしまいたくない。


「俺の部屋さ、なんつーか、そういう物、多いから。お前入れたらいろいろ面倒なことになりそうで」


あ・・・あの類のもの。俺が想像してた以上に大量にあった。


俺もうそれ・・・見ちゃったし。


「べ、別に何も隠すほどのものじゃないだろ?」


「まだ見てないくせによく言うよ。見たら、絶対びっくりするって」


「見せたいのか?」


「別に、できれば見せたくない」


そりゃそうだ。もし俺がストレートの人間だった日には、悟は俺から嫌われてしまう。それは悟自身一番分かっていたんだろう。


・・・さっさと部屋に入っていれば、もう少し早く・・・


「おい」


「へっ?」


「体に全然力入ってねぇって、大丈夫か?」


「う、うん、大丈夫」


「あんまり無理すんなよ、慣れないことしすぎてんだからさ」


悟が俺を気にかけてくれていたことを、悟が俺を気にかけてくれていることを、やっとそばにいれることで実感できて、すごく嬉しい。


それなのに俺は、悟に対してひどい感情を持ってしまった。


もっとかまってくれ。もっと俺のことを考えてくれ、もっと・・・もっと・・・って。


なんで図々しいんだ、俺は・・・。くそっ


「俺の部屋ちょっと、寒いかも」


「平気だよ、俺、寒いの好きだし」


「ははっそうかいそうかい」


「なんだよ、悪いかっ」


「なんか、お前めっちゃ気使ってんなぁって」


「使ってねぇよ、別に、」


「あっそ」


ニヤニヤしながらそういう悟が、まるで無邪気な子供のように見えた。


一瞬。一瞬だけ、昔に戻った気がしたんだ。


あの頃の、お互い純粋だった頃・・・


悟は、あの頃からずっと、俺を恋愛対象としてみてたのかな。



気がついたら扉の前。ヤバい。本当に力、入らないかもしれない。


「悟・・・ごめん、力・・・はいんねぇ」


「いいよ、別に、つーかそっちの方が、俺に身を委ねてくれてる感じでなんかすげえ唆るんだよね」


「な、なんだよ、唆るって・・・」


部屋の中は悟の言った通り、割と寒かった。


夕方侵入した時はそうでもなかったのに、夜だと冷えるのか。


「あんまり周り見るな、見に毒なもの、割と多いかもしれねぇ」


「いいよ別に、悟の方こそ、気使ってんじゃん」


「そりゃあ、だってさ・・・」


「俺、ずっと男にしか興味ねぇよ?てか、悟にしか興味ない」


「そういう問題じゃないだろ! ・・・嬉しいけどよ」


うぅ・・・気持ち悪りぃ。なんで酒なんか飲んじまったんだ、と今更後悔してしまう。


せっかく一緒に居られるのに、もったいない。


「おい、本当に大丈夫か?気分悪そうなんだけど」


「大丈夫って言ってんじゃん」


「ふーん。なら、いいんだけどさ」


変な間が空いてしまって、すごく気持ち悪い。


ゆっくりと悟のベッドに押し倒された。


さっきまでしてたのに、少し途切れるだけで心臓が死ぬほど早くなる。


息が詰まって、体が熱くて死んでしまいそうだ。


好きすぎてたまらない。


悟の全部が好きすぎてたまらない。


「指、挿れるぞ」


「え?ど、どこに・・・んぁっ!」


悟が俺に声をかけると同時に、勢いよく尻の穴に悟の太い指が入ってきた。


突然のことで驚いて、おかしな声が出てしまった。


我慢しようとしても、息、声が漏れる。


「お、おい! まだ俺いいって言ってな・・・んんっ」


「ん?じゃあお前、嫌なのか?」


「い、いやじゃ・・・ねぇけどさ・・・」


「ならっ、おとなしくしてればいいんだって」


「あぁっ! がっ・・・ちょ、もう少し優しくしろよ!!」


「ごめんごめん、つい力んじまった。」


「・・・本当に最後まで・・・するのか・・・?」


「お前に任せるよ、まだしたくないんだったら今日は俺、我慢するし」


「俺は別にどうだっていいよ、悟がしたいんだったらして欲しいし、そうでもないんだったら、中途半端は気持ちでしてほしくないってだけで・・・」


「じゃあ、する。俺が中途半端な気持ちなんかじゃないってことを証明しなきゃな」


指がさらに奥まで入ってくる。


優しくしろと言ったせいなのだろうか。じっとりと、スローなペースで俺の中を掻き回している。


すごく、変な感じだ・・・むずがゆくて、気持ち悪いんだけど・・・気持ちいい・・・。


「ちゃんとほぐしてやるから、心配すんなよ」


「あ、当たり前だろ! 痛くしたら、ゆるさねぇからなっ!」


「はいはい。わかってるって。そんなにいちいちがっつくな、可愛くて仕方がねぇっつの」


「男に可愛いって・・・あぁっ、んっ・・・意味・・・わかんねぇ」


「かわいいはかわいい。言葉の通りだろ」


悟の中指がゆっくりゆっくり深いところまで侵食してくる。



その瞬間。脳に電流が走ったかのような衝撃を感じた。


「あぁっっ! くっ・・・」


「・・・ここか」


そう言って悟は、そこばかり中指で掻きだした。


異常なほどの快感に体をよじらせて反応してしまう。


「あぁっ・・・そこ・・・マジだめっっ!」


嫌がる俺を尻目に、悟はこう言い放った。


「指、増やすぞ」


「は・・・はっ? 指・・・増やすってオイ・・・んぁっ!」


痛いんじゃない。思ってたより全然痛くない。


でも、自分の予想をはるかに超える快感が俺を支配する。


悟はゆっくり、人差し指も増やして、俺の快感のツボを重点的に刺激する。


本当に・・・やばい。


悟の顔が真っ赤になっているように見えた。


でも、自分の顔や体は、悟以上に赤く熱くなってるだろう。


・・・だって、恥ずかしいだろっこんなの・・・




中を掻き回しながら、悟が顔を俺の顔に近づけて来た。


抵抗する気などない。


ゆっくり唇を重ねた。


悟の舌が俺の舌に絡みつく。


それに反抗するように俺も舌を絡め返す。


それが悟は嬉しかったのか、掻き回す速度が一層早まる。


それが俺は嬉しくて、ついつい息が漏れてしまう。


静寂の中、掻き回される俺のクチャクチャというエロい音と


漏れてしまう俺たちの吐息だけが響いていた。





「はぁっ、はぁっ」


「ちゃんと息しろよ。死ぬぞ?」


「そんなキスされて、息なんかできるかよ・・・」


「・・・二つ目な」


「え?」


「一つじゃ足りないみたいだから」



中指が音を立てて俺の中に入ってくる。


「むっ無理だって!もう・・・限界っっっ!」


「おいっ、そんな締めるな、痛くなっちまうぞ」


「い、痛くはないんだけど・・・もうっ無理!」


もう俺はイッてしまう寸前だった。


中なんていじったことない。こんな快感、味わったことない。


それも一番されたかった人にされてるんだ、我慢できるわけないじゃんか・・・


「・・・イクのか?」


「んっ・・・ふっ・・・」


「・・・出しちゃえって、我慢すんな」


「あぁっ!そっそんな強く・・・しな・・・んんっ!」


「やばい・・・優太・・・マジかわいい・・・たまんねぇ」


そう言って悟は、中だけじゃなく、勃ち上がった俺のモノまで弄りはじめた。


さっきまでとは違う、本気でイかせる扱き方で・・・


本当に、耐えられない。



「あぁっ!ちょ・・・待てって!マジ・・・イクっ!!」



今日何度目かわからないのに、何日も溜めてたのかってくらい大量に出た。


熱いものが自分の腹、悟の腕にかかってしまったのが見えた。


「あ・・・ごめ・・・」


「すっげえ・・・熱いし、沢山・・・」


「うっ・・・うるせぇ!言うなっ恥ずかしいだろっ・・・」


「いいじゃん、本当のことなんだしさ」


そう言って悟は、自分の腕にかかったのを口に運ぶ。


相変わらずこんなまずいものを嬉しそうに味わうなぁと思うくらい。



でも今日は、悟も俺も最後までするって決めた。


もう余力はほとんどない。


意識もだんだん薄れてきた。


それでも・・・・・・



この幸せすぎる時間を大切にしていたい。


ずっと、こうしていたい、ただそれだけなんだ・・・



「・・・そろそろ・・・挿れるぞ」



耳元でそんなことを囁かれて、いてもたってもいられなかった・・・









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る