第15話 俺の知らない昨日の夜(2)

悟の舌が俺の口の中に侵食してくる。


「もっと口、開けろよ」


「は?なんでだよっ」


「だってキスって、舌絡めないと成立しないじゃん?」


ゆっくり柔らかく、でも力強く入り込んでくる悟の舌はとても熱かった。


酔っているせいで、冷静な判断はできそうにない。


「ん・・・はっ、はっ・・・」


思わず息が漏れてしまう。


「優太・・・かわいい」


真顔でそう言われると、ものすごく恥ずかしい。


顔を赤らめているのに気付いたらしい。一つクスッと笑って、


「もう、ヤっていいかな」


「な、なにをだよ・・・」


「全部、最後まで」


「は!?え、あ、ちょっと待て」


まだ、心の準備というものができていないんだよ・・・


「大丈夫、ゆっくりしてやるから、初めてなんだろ?」


「そういう問題じゃないだろっ!」


「大丈夫だって、心配すんな、すぐに慣れる」


別に怖いわけじゃない。ていうか今すぐしてほしい。




でも・・・


「悟、俺なんかとしてていいのかよ」


「は・・・?」


「悟、俺以外にもセックスしてるやついるんだろ?それなのに、いいのかよ」


心にもないことを言ってしまった。確かに、これが酔った勢いでの冗談の行為だったら今すぐやめてほしい。俺以外の好きな人を、俺と重ね合わせてやろうとしているんだったらすぐにやめてほしい。



俺だけを見て、俺とだけ、してほしい。


「はぁ・・・」


「優太。お前はさっきの俺の話のなにを聞いていた?」


「なにをって・・・」


「確かに悪いが、セックスはしたことあるよ。それも、お前の言う通り男だ。」


「でも、俺に彼氏はいないんだって。言っただろ?」


「だからそれが!どういうことかわからねえって言ってんだよ!」


「いちいち説明すると、長くなるんだ・・・」


「なんだよ、なんだよなんだよ!どうせ俺なんて、当てつけだろ?酔った勢いで、とりあえずヤってやろうっつー魂胆だろ!?」


「だから、違うって言ってるだろ!!」


「なにが違うんだよ!」


「俺は!!お前のことが好きだって、言ってんるんだよ!いい加減気づけよ!!」


怖くて怖くて、とにかく反発していたのに、『好き』という言葉で正気に戻った。


これは、悟の『本心』なんだよな・・・?


信じて、いいんだよな・・・?


「今日早く帰ってきたのは、お前にちゃんと自分が男が好きっつー部類で、そんでもってお前が好きだっていうことを、ちゃんと伝えるって決心したからなんだよ。」


「・・・」


「もう、逃げるのはやめたんだ・・・逃げるのに、疲れたんだ」


「・・・」


「嫌われてしまってもいい、もう本当に今度こそ、二度と話せなくなってもいい。それでも!お前にこの肝をだけはちゃんと話しておきたかったんだ。」


・・・俺と一緒じゃんか


悟も俺と同じことでずっとぐるぐる考えてたのかよ・・・


そんなの・・・知らなかったよ・・・


「そして帰ってきたら、全裸で酔い潰れてるお前が目の前にいるって・・・そんなの、すぐにでも抱きつぶしてしまいたいと思うのは当然だろ!?」


「・・・」


「過去の俺のことは今度ちゃんと話す。だから、今だけは全て忘れて、俺に抱かれてろ。」


「・・・わかったよ、でも、ちゃんと教えろよ?俺、納得してねぇからなっ//」


「ははっ、わかったって・・・」


久しぶりに見た悟の自然な笑顔。これがたまらなく嬉しくて、くすぐったかった。


ゆっくりとおれに向かって手を伸ばしてくる。両手で俺の頬を包んで、撫でた。


その手がゆっくり下がってくる。


ゆっくりと全身を撫で回して、悟は俺の目を見た。


今度は、ニヤッと不敵な笑みのようなものを浮かべて、また俺を床に倒した。


キスされる気がして、ぎゅっと目を瞑ったら、不意打ちで首筋を舐めてきた。


「ひゃっ・・・」


突然のくすぐったさに、すごい声が出てしまった。


それでも悟は構わず首筋を舐めてくる。


舌先の使い方はとてもエロくて、自然と体が反応してきてしまう。


「くっ・・・んっ、はぁっ・・・」


「マジでお前、感じてる時の声とか顔とか、全部かわいいんだけど。」


そう言って悟は、体のラインに舌をゆっくり這わせながら、下へ下へ攻めてきた。


「あ・・・ちょっと待て!そこはダメッ・・・」


舌先が俺の右乳首に触れた。ほんの少ししか触れていないのに、敏感に反応してしまう。


「お前、ここすげえ弱いな」


そう言いながら 、舌先を使って舐めまわしてくる。


それだけじゃなく、今度は、乳首を吸い始めた。


「あっ・・・ちょ、ダメだって!吸うなっ!何にもないしっ・・・」


「なにもないことはないだろ。お前の感じてるところがよく見れる」


やばい。悟は俺が思っている以上に『変態』なのかもしれない。


いや、俺がそういうことに疎すぎたのかもしれない。




乳首を攻められるのは、想像以上に気持ちよくて・・・


「乳首だけで、こんなに勃っちゃって・・・」


「う、うるせぇ!見んなっ変態!」


「変態って・・・それはお互い様だろ?」


ニヤニヤしながら悟はそう答える。


「前戯だけでこんなに感じちゃうとか・・・本番がすげぇ楽しみだ」


セックスは挿れて出して、終了。そんな感覚だった俺にとって、長い前戯は未知の領域。想像すらしたことがない。



お互い酔ってるのに・・・




今夜は本当に、長い夜になってしまいそうだ、と感じた。



それすらも、何年も待たされ続けた俺たちにとっては、『最高の時間』





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