第14話 俺の知らない昨日の夜(1)

「・・・ってことだったんだけどさ、思い出したか?」




・・・・・完全に思い出した。



やってしまった。こんな大事を忘れてしまった俺が情けない。



・・・ヤってしまったとでも言えばいいんだろうか。



心臓が痛い。




悟の話から、昨日の夜というか、今日の朝のことを整理すると・・・・・

















「・・・・た」


「・・・うた」


「優太・・・優太!」


「あ?んだようるせぇなぁ、人が気持ちよく寝てるっつーのによぉ」


「は?っつーかお前、これ、全部飲んだのかよ!?」


「お、おう。美味いもんじゃないな、ビールっつのは」


「・・・酒くせぇ」


「うるせぇ、こんなもん俺の勝手だろ?」


「いいから、服着ろよ、風邪引くだろ」


「んー?いいんだよぉ、風邪くれぇひいたって」


「なにがいいのかわかんねぇから、ほら、着ろって。・・・恥ずかしいしさ。」


「・・・・うるせぇ!!俺に優しくすんなよ・・・」


「は?」


「つーか、なんで早く帰ってきてんだよ。彼氏様と一緒じゃないんですかぁ〜?」


「は?彼氏?お前、なに言ってんだよ」


「しらばっくれるのかよ、毎週毎週泊りこんでるやつの話だよ!」


「だからってなんで彼氏って・・・」


「だって悟、ホモじゃんか!」


俺はハッとした。なにを言っているんだ自分。これは 、絶対に言ってはいけない一言だったはずだった。

酔った勢いで・・・なんてことをしてしまったんだろう


「えーっとさ、いつ・・・気づいた?」


「・・・」


「できることなら、気づかれたくなかったんだけど」


「・・・」


「ははっ、軽蔑するか?こんな俺のこと」


「・・・別に、そんなわけないじゃん」


「そうか。でもな・・・」


「なんだよ」


「俺に彼氏は、いない」


「は?」


「俺が止めてもらってんのは」


「鈴木先生だろ?うちの」


「・・・そこまで知ってんだ」


「もしかしたら、もっと知ってるかもね」


「鈴木先生家に泊めてもらってるよ」


「じゃあ今日はなんで早く帰ってきたんだよぉ!」


「・・・今日は、早く帰ってきたい気分だったんだよ」


「そんなに俺と毎日顔をあわせるのが嫌だってのか!!」


「それは違う!!!!」


突然の怒号にさすがに身がすくんだ。こんな、怒りに震えた悟すら、久々に見た気がする。


「お前、これには気づいてないんだな。俺がどんな気持ちで週末家に帰ってきてないのか」


「え・・・?」


「俺が今日どんな気持ちで家に早く帰ってきたのか!!」


「そ、それは・・・」


「帰ってきて最初に見たものが、泥酔して全裸のお前で動揺してることにすら気づいてないのかよ!」


「あ、え・・?」


顔を真っ赤にして欲情した悟を初めて見た。

こんな悟を前にして、俺がなにをどう我慢すればいいんだよ。


どう・・・我慢すれば・・・


「お前も、顔真っ赤じゃねぇか」


「よ、酔ってるんだよっ」


「お前が女に興味ねぇってのは知ってたけど、まさかさ・・・」


「う、うるせぇ!茶化すな!」


「酔ってると勃ちにくいんだぜ、それ」


ふと悟が指差してきて、猛烈に体が熱くなった。


「酒入っててそんだけ勃ってたら、言い訳、できねぇよな」


「は、ちょ、や、やめろよっ」


「悪いけど、俺も酒入ってるから・・・ヤっちゃったら、歯どめ気がねぇかも。」


「じゃあ、すんなよ・・・」


「ははっ、いきがってるけど、抵抗しないのな」


抵抗なんて、できるわけがないだろ・・・

こんな展開、想像してなかった。

今日はダメだ。色々ありすぎて頭がおかしくなりそうだ。


静かに悟が俺のことを床に倒す。

やっぱり悟は攻めだったんだと、思った瞬間に



悟の柔らかい唇が、俺の唇にゆっくりと重なった。


もうお互い言葉なんていらない。何年もまともに会話ができていなくても、


昔からの幼馴染であり、



永遠の想い人なのだから。




・・・都合良いな、俺。




ここから俺の知らない長い夜が始まる・・・

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