第11話 袖振り合うのも
多分悟は今日も帰ってこない。
というか、今日は帰ってこないでほしい。
いろいろ、自分1人で考えていたいと思う。
探偵ぶって悟のことを考えると、思い当たる節がある。
今日、俺は初めてAVを見てしまったわけだが、それによって知識の上乗せが起きたわけで。
まずは、悟が付き合っているであろう人物。
そいつは多分、うちの学校の数学教師の鈴木先生だ。
うちの学校の中では、いわゆるイケメンの部類に入るのだろう。
いいところだけあげれば、若くてハンサムで・・・ってとこか。
悟のタイプかどうかなんてわからないが、女子生徒からの人気もある。
それでもって独身。
誰かと付き合っているんじゃないかって噂は少数ながら絶えず流している奴もいる。
それだけ割と人気がある先生ってわけだ。
で、ここからは俺の仮説。
2人の会話の中で、気になるところが幾つかあったことがある。
との時の俺はまだいろんなことに疎くて、よくわからなかったが、今なら分かる気がする。
それは、俺が職員室にプリントを取りに行った時だったはず。
「さーっとるっ」
「なんですか?先生」
「いやぁなんとなく声をかけただけだけどさぁ」
「そうですか」
「そうですか、って冷てぇなぁおい」
「そんなことないですよ、いっつもこんな感じですって」
「昨日なんて特にさ〜」
「昨日がなんですって?」
「あぁ、いや、なんでもねぇ」
「先生。腰、大丈夫ですか?」
「あ、あぁ、全然大丈夫。もう慣れたよ」
「そうですか、それなら、よかった」
思い出すだけで笑いがこみ上げてくる。
これ、明らかにセックス後の腰をいたわってるだろうが。
無駄に優しい悟を見た気がする。
まぁ、これだけで鈴木先生と悟がセックスをしているって証拠にはならないけれども、悟が鈴木先生の家に出入りしているのは確実だろう。
あの瞬間は気にも留めなかったが、《昨日》というのは日曜日だったはず。
休日にも会うくらい、仲が良いのだろう。
逆に言えば、泊まり込みでセックスするなんてのは週末しかできない。
だから悟は週末はうちに帰ってこず、鈴木先生のところに泊まり込んでいるんだろう。
で、腰をいたわっているということは、悟が攻める方って認識でいいんだよな・・・?
実際悟が腰を痛めて帰ってきたことはないし。
実際、受けが必ずしも腰を痛めるかって言えばそうじゃないとは思うけど、多分攻めだろう。
どっちから告白したんだろう。カミングアウトすることだって容易じゃないはずだ。
きっと、うまくやったんだろうな。
疑問というか、納得いかないのは、俺が苦労して貧乏だけれどもうまくやりくりしている裏で、高価なAVビデオだの雑誌だのを買っていること。
別に悟がそういうものを見たりするのは咎めるつもりもない。
思春期といえば思春期だから、性欲を抑えきれないのもわからないこともない。
だからって・・・わざわざあんな高いものを大量に買う必要はなかっただろう!!
せめて無料で我慢しろよっ! ←
はぁ。
鈴木先生か。
強敵だな。
棚にこっそり借りたAVたちを戻して、何かを決心したかのように、一階の居間へ向かった。
この時、悟がどんな気持ちか、悟が何を決心したか、そんなことを知る由もなかった。
知ろうともしていなかった。
会いたい。
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