第5話 目の前にあったのは


俺の目の前にあったのは、


大量の缶ビールだった。


・・・一旦状況把握だ。ここで冷静さを欠いていてはいけない。


1,俺たちはまだ未成年です。

2,今まで冷蔵庫に悟がビールを入れていたことはありません。

3,どんなにやさぐれていても、外面は良く、非行はしていません。


ということは、[悟が飲むために買った]というよりも

[誰かに飲ませる、またはお付き合いで飲むようになった]と考えるのが妥当か。


悟に影響を及ぼすような人は・・・いるかわからない悟の彼女。


でも、これだけ証拠てきに様々なことが起きているんだから、いると考えたほうがいい。

悟だってもう年頃だ。イケメンだし、なんでもできるわけだから、そこらの女子が放っておくわけがない。

それは俺だってずっとわかっていた。


・・・年上ってことだよな。ビールが置いてあるってことは。

でもっ…悟が俺にわざわざあからさまに見せつけるようにビールを置くなんてありえない。

あ、いやでも・・・悟が俺に興味ないなら別に気を使うわけもないよな。


俺ってやっぱり自意識過剰なのか、しょうもないことばっかり考えて


気を紛らわすための夕食作りだったのに、またこんな気持ちにさせられてしまった。

ある意味、悟に振り回されまくっている気がする。


どうしたらいいんだ・・・


「一番近くにいるのに、一番遠い人。一番近くにいるのに、一番思いを伝えられない。こんな気持ちを抱くくらいなら、いっそのこともう二度と会いたくないヨ・・・」


俺は何詩人ぶってポエム読んでんだ。

正気に戻ると、今までのことが超恥ずかしい。


くそっ!


ってか、冷蔵庫の中、キャベツしかないんだけど!


・・・買い物行くか・・・?いや、どうせ悟も帰ってこないし、外食で済ませてしまおう。


俺は、ずっと開けっ放しだった冷蔵庫を閉め、着替えを始めた。

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