第11話

「ずっと俺の彼女でいて」

そう言われた時、頷けなかったのは…

(私、藤倉くんのために何もできてないから)


私は愛先輩に呼び出されて「私の方が、彗の為になってる!」と言われた。

「彗のためにも、バスケ部のためにも、高校のためにも付き合いをやめて!」と。


「すごいっすね!」

呼び出されて、黙って聞いていた私の後ろにいつの間にか赤城くんが来ていた。

「高校の名誉のために、彼氏と別れる彼女っているのかな。

第一、新川さんと別れたら、藤倉がバスケに集中できて、うちの高校が総体優勝になるなんて、遠大な予想すぎやしませんか」

愛先輩は赤城くんに怒鳴った。

「あんたは、野球部よね、野球部にバスケ部は理解できないでしょ!黙っててよ」

「俺はバスケはわかんない。でも、藤森の友達だし、同じ男だから、よくわかる」

赤城くんは私を見た。

「新川さんが彼女なら、萌えるでしょ」

「なっ…!」

慌てた私は、わたわたと手をふる。

「ないないないない!」

赤城くんは、クスッと笑う。

「もし、新川さんが俺の彼女で、俺が甲子園とか出たら、この人、俺より喜んでくれそ」

「…」

「俺が悔しい時とか苦しい時、黙ってそばにいてくれそ。

なんか、俺より俺でいてくれそ」

「…」

「新川さん

藤倉は、役に立つ彼女が欲しいんじゃないよ」

「赤城くん…」

「優衣が欲しいんだ」

「…」

「ずっと好きだったんだ。今更文句言われてたまるか」

赤城くんのまっすぐな瞳に気圧される。

「ぶ」

赤城くん、吹き出す。

私の頭をくしゃっと撫でた。

「藤倉の気持ちだからな」

くしゃくしゃくしゃくしゃ。

「わあ、やめてよ、赤城くん!」

「さらっさら!気持ちイ~」

「やーめーてー」

「いいわ、新川さんの毛並み」

「犬じゃないんだから!」

「猫でもいいな。『にゃんにゃん』って言ってみな」「絶対言わない!」

ぎゃあぎゃあ言いながら、じゃれあう私たちを見て、愛先輩は苛立った。

「私の方が彗を愛してる」

「…」

「十年間、好きなんだから!ポッと出のあんたに負けない!」

「それ、関係ないから」

赤城くんが、あっさりとぶったぎる。

「大事なのは藤倉が新川さんを好きで、新川さんが藤倉を好きなことだから」


(そうだけど……)


赤城くんの言うことは正しい。


でも。


私が藤倉くんと付き合っていていいのかどうか。


バスケも知らない。藤倉くんの凄さも知らない。

彼の努力も夢も何も考えてもいなかった私。




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