第10話
「世界中の何よりも俺はあなたをとるから!」
「…」
私は呆然と、藤倉くんとマネージャーさんを見る。
(バスケうまいって聞いてたけど、高校はスポーツ推薦だったんだ)
そういうことも私は知らない。
(大学も推薦予定なんて知らない。
どこに住んでるのかも
好きな食べ物も
なんにも知らないんだ)
このマネージャーは中学の頃の藤倉くんも知っている。
きっと何もかも知ってる。
「藤倉は今が一番大切な時だから」
「俺が一番大切なのは新川さんだけど?」
かすれた声で藤倉くんが言う。
「初めて会った時、合格発表の日。
俺は推薦だから、友達の合否が気になって見に来てたんだ。西ヤンとカッシーはチームメイトだからね」
「…」
「駅から、おばあちゃんの荷物持って、ニコニコしながら出てくる女の子がいて」
「…」
「すげえかわいいなあって思って」
「それ…もしかして…私?」
「そうだよ…見知らぬお婆ちゃんを助けていた新川さんだった」
「…」
「高校に入学したら、新川さんが友達とじゃれていて。やっぱりニコニコしてて」
「…」
「ずぅっと笑いながらみんなの話聞いてる新川さんは、かわいくて優しい女の子で」
「…」
「勇気があって前向きで謙虚で」
藤倉くんが私を見てる。
「新川さんを好きになって、毎日見てた。毎日毎日見てるのに、新川さんは俺に気づいてなくて…一度でいいから目を合わせたかった。
告白したらオーケーで、動物園行ったら隣に並んでくれて。昼ご飯一緒に食べたら楽しくて、新川さんといると癒される。安心する。
俺に頑張れとかしっかりしろって言わない。
ありのまんま、あるがまんま俺を受け入れてくれた。
俺は新川さんが好きだ。
もう他人には戻りたくない」
「…」
一体何回目の告白だろう。一回目より二回目より深くなっていく。
マネージャーが説得する。
「彗……でも部活は大切だよ?」
「俺もバスケは大切だよ。でも、新川さんとお昼ご飯食べたい。
朝も放課後も会えないし、土日も遊びにいけないなら、休み時間の度に会いにいきたい。愛先輩も邪魔しないで」
マネージャーは怒っている。
「彗のバカ!」
マネージャーは立ち去った。
「あんたのためを思って言ってんのよ!」
そう言い捨てて…。
(あのひと、藤倉くんのことが好きなんじゃ…)
「ごめん、愛先輩は、小学校のミニバス時代からマネージャーなんだ」
かすれた声で藤倉くんが言う。
「俺にしっかりしろって激励する担当」
「…いいひとだね」
「うん。
でも俺は新川さんが好き」
「…」
まっすぐで迷いのない瞳。
「ずっと俺の彼女でいて」
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