第12話

きっと、この恋はダメになる。


私は藤倉くんを呼び出した。


「藤倉くん、やっぱダメだ」

私は藤倉くんに言った。

「友達で始めようと思ったけど、藤倉くんはバスケを頑張らないといけないでしょ。

愛先輩にあのあと言われた。

バスケは集中力が大切だから、チームワークを崩すような状態になったらいけないって。

だから、やめとこ?」

藤倉くんは、私をじぃっと見つめている。

まるで焼き付けるように。

やがて、かすれた声で藤倉くんは言う。

「あなたが俺を想うより、俺の方がずっとあなたを好きだから。俺は…勝ちようがないんだ。

あなたの言うとおりにする」

「…藤倉くん」

「俺、3日間楽しかった。新川さんを好きになって一年間、浮き立ってたけど、この3日間は神様がくれたご褒美だと思ってる。

俺はあなたを好きでいるから。

あなたは俺を忘れて」

「…藤倉くん」

藤倉くんは、きゅっと笑った。

「じゃ」

立ち去る藤倉くん。


私は

わずか3日で初めての彼氏と別れてしまった。

゜・*:.。..。.:*・゜゜・*:.。..。


「新川さん」

放課後、校門で私は男子に呼び止められた。

愛嬌のある、かわいい子。

「西山です。西ヤンだよ。覚えてるかな」

「あ…藤倉くんと同じバスケ部でしたよね…。今日、部活は?」

「今から行くとこ。ねえ、新川さんは本当に藤倉と別れたの?」

「…推薦で入った人の部活の邪魔は出来ないから」

「まあ、うちらは、部活あるから、デートも出来ないしバイトも出来ないから、女子から見たら、貧乏だし一緒に遊べないし、つまんないよね」

「そーゆーのじゃなくて、迷惑かけたくないし」

「藤倉から告白して、藤倉が迷惑がる訳ないじゃん」

「…」

「藤倉、いい奴だよ?

俺、藤倉とバスケを続けたくて、この学校を受験したんだ。

でもさ、俺、バカだから、勉強がダメでさ。

藤倉は推薦決まってるし、自分もバカなくせに俺の勉強に、ずぅっと付き合ってくれた。

俺の合格発表も一緒に見にきた。

俺以上に喜んでくれた。

そういうあいつだから、俺は藤倉とバスケしたいんだ。

俺は藤倉が好きだから、新川さんにも藤倉の良さ、わかってほしい」

「…」

「いいかげん、好きになれよ、藤倉のこと」

やや苛立つように西山くんが言った。

「彼女できたせいで、ヘタレになる、バスケットプレーヤーじゃあないぞ!中学三年間MVPな藤倉をなめるなよ!」

「…」

「今からバスケ見にこいよ!あんた見て、デレデレしてるだけが藤倉彗じゃあないとこ見とけ!」

私は西山くんに、引っ張られた。

「や、愛先輩が怒るから!」

「そしたら俺が怒ってやるわ!」

ずるずるずる…

私は西山くんに引きずられ、とうとう体育館前に連れてこられた。

「そこで見てろよ!一時間見てから、藤倉を捨てるか考えろ!」



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