第7話


「お昼、一緒に食べよ~」

休み時間、クラスに藤倉くんがやってきた。

「新川さん、弁当?学食?購買?」

「お前なあ」

私の隣席にいた赤城くんが呆れた声を出す。

「新川さんって、名字に『さん』で、自分の彼女を呼ぶなよ。しかも隣の棟の三階から5分休憩なのにくるな。メールしろよ」

「赤城、うっさい!新川さんと俺は友達からなんだ!名前呼べる仲じゃないの」

「友達だと、新川さんと俺も友達だぞ。藤倉は俺と新川さんが、一緒に動物園言ったり昼飯食っても良いのか」

「やだ!でも、まだ友達ですら、なりたてだから!」

「ふぅん」

赤城くん、ニヤリと笑う。

「じゃあ、俺の方が新川さんと親しいな。

ね、新川さん、今度、水族館行こうか。あそこのシャチのぬいぐるみ、デカくて安いんだって!かわいいぞーお」

「!」

赤城くん、魔性の微笑み。

「新川さんは、バクのぬいぐるみが好きなんだろ?シャチもモノトーンで大きいぞぅ」

両手を広げた赤城くん。

「だめ!」

藤倉くんが赤城くんの腕をペシッとはたいた。

「新川さんにさわるな!」

「さわってない。さそってるだけ」

「誘うな!誘っていいのは俺だけだ!」

そういうなり、私をぎゅうっと抱き締めた。

(ひいいいい~!)

焦って硬直する私。

ニヤニヤ笑う赤城くん。

「いいもの見た」

「な、なに」

「初々しい新川さんと天然ボケの藤倉」

「う」

「友達の好きな女に手を出すような、甲斐性なしじゃないよ、俺。

藤倉、チャイム鳴ったぞー、クラスに帰れよ。

大体、俺がいつも新川さんの隣の席を取ってた理由をお前、悟れよ」

「なあに?おせーて」

「新川さんに悪い虫がつかないよーに、見張ってたんだよ、お前のために」

「赤城ぃー!嬉しい!」

「抱きつくな!自分の教室に帰れよ!」

赤城くんに怒られ、藤倉くんが、私に手を振る。

(か、かわい~)

赤城くんも、ニヤニヤ笑う。

「わかったろ、藤倉はいつもあんな感じ」

「…」

「女の子の秘密は絶対まもるよ。だから安心して付き合いな」

「…あ、…うん」

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