第6話
「どーだった、初デート」
赤城くんに聞かれた。野球部員で席は隣、クラスの副委員長だから、私の一番仲良しな男子だ。いつもお世話になってるし、なんでも話せるし相談する。
…でも…
「デートなんて言った?私…」
「いや。新川さんからは聞いてない」
「ユキからあ?もうヤダ、恥ずかしい」
「違う」
「真実ちゃん?沙夜香?」
「違う」
赤城くんは笑う。スポーツマンらしい爽やかな笑顔だ。
「俺、新川さん以外の女子とあんまり喋んないじゃん」
「じゃあ誰から…」
「藤倉から」
「えええ?」
「何?何で?藤倉くんって、そーゆーの、ベラベラ喋る人なの?」
(やだ、意外とサイテー)
「いや、藤倉からだけど、ベラベラ喋ってはいない。あいつ、新川さんのこと、すげー、大事にしてんだ。
告白前も新川さんのこと『かわいい』『絶対いい子だ』しか言ってなかった。
俺が新川さんと同じクラスで、クラス委員もしてるし、一年の時から席がずぅっと隣だから、羨ましがって『赤城はいいなあいいなあ』って言ってた。
でも、『昨日、新川さんとどうだったこうだった』って言う奴じゃあない。
朝と夕方、体育会系は登下校時間がかぶるじゃん?土日もよく見かけるのに、昨日バスケは部活なかったし、今日嬉しそうだったからデートだったのかな、と。つまり、俺の勘」
「ひどっっ!」
私は赤城くんをぶん殴った。
「恥ずかしい!」
ぽかぽか殴ったら、赤城くんは笑いながらよける。
「藤倉にも聞いてみたよ俺。『どーだった?』って」
「えーーーっ。やめてよ」
「大丈夫。『新川さんがかわいかった』って言ってた。でも『壊れそう、壊しちゃいそう、どうしよう』って言ってた」
「えええ?」
赤城くんは、ニヤッと笑う。
「壊れちゃいそうなことされた?」
「ぎゃああ!」
「うわ、真っ赤だ、新川さん!ホントにかわいかったんだ。からかいがいがあるわ」
「ちょ、やめてよ!」
ぽかぽか!どかどか!
「新川委員長が、赤城副委員長に乱暴してます!」
他の男子がゲラゲラ笑っている。
「仲良いよな、お前ら。付き合ってんの?」
「違う違う。新川さんは藤倉の彼女になったんだよな」
「な、なんで知ってんの!赤城くんがバラしてんの?」
「ちげーよ。運動部の奴はみんな知ってるよ。藤倉がずぅっと片思いしていて、ついに告白したってこと」
「ええええーーーっ?」
「まあ、委員長が文化祭でピアノを弾けば感動し、外で花を植えてりゃ喜び、リレーで走れば応援し、英検受かれば合格者一覧の写メを撮り…、好きなタイプの話をすれば『新川さん!』と絶叫し」
「ああ、廊下で見かけただけで溜め息ついて『今日もかわいかったあ』って言ってるから」
「体育会系男子のほとんどは応援してたね」
「いい奴だよ、藤倉。大事にしろよ、委員長」
「そうだぞ、いじめるなよ、委員長」
「…」
(なんで私が藤倉くんを邪険に扱う設定なのよぉ)
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