番外:第百九話までの人物紹介

〇日本組


・相川拓二

 ムゲンループの住人。ムゲンループを五十週以上繰り返し、『賢く』生きることをモットーにしている。これまでの経験から達観的な視点で物事を慎重かつ的確に捉える能力に長けている。

『僕』と自称していた頃の弱い自分を憎んでおり、その弱さを自覚させられることとなった原因である暁に対して、酷く執着している。そのため、精神的にも酷くタフである。

 またそこから転じて、『勝負』というものに異様に拘っており、勝ち負けには一種の矜持を持っている。

『賢く』生きるための努力凄まじく、数カ国の言語を話せ、カポエイラやシステマを主として、幅広く近接格闘を得意とする。銃の腕前はそこそこ。とある事情からチェスがかなり得意。

 ムゲンループで生きる事に生きがいを見出しており、結果的には祈と相対してしまう。

 千夜川編で受けた肩の古傷を覆うように、その左腕全体には包帯が巻かれている。



・柳月祈

 拓二同様、ムゲンループの住人。拓二が認めるほどの天才肌で、瞬間記憶能力を有している。頭の回転が速く、場の適応力・理解力に富んでいる。

 経験の多い拓二に対し、自身のその能力で補うことで肩を並べている。しかし、精神的には未熟な面があり、拓二につけ込まれることがある。

 中学三年生であり、拓二達とは歳も学校も違う。



・桧作夕平

 拓二の親友。高校一年生。拓二が言うほどの典型的な主人公気質で、いつもは元気におちゃらけているが、締める時には締める土壇場に強いタイプ。人付き合いが良く、誰とでも仲良くなれる。

 一般的高校生にしては度胸があり、物怖じしない性格。暁とは幼馴染。



・立花暁

 夕平の幼馴染。夕平と比べ引っ込み思案でやや内気。優しい性格ではあるが、桜季にはそうした側面を上辺だけ取り繕った弱さでしかないとして指摘された。

 ムゲンループの間、桜季に殺され続けていたが、千夜川編でついに拓二達の手によって死の運命から免れることとなる。

 が、その数か月後に、またしても拓二達の目の前で死亡。物語に新たな謎と狂気を引き出すきっかけとなった。



・千夜川桜季

 拓二がかつて恋していた少女。しかし桜季自身は夕平のことが好きであったため、その恋慕が飛躍し暁を殺すにまで至る。拓二、祈に勝る程の才能を持つ完璧超人であり、母校である清上学園からも、『清上の最高傑作』とまで呼ばれる。

 プロをして『予言の目』と呼ばれる程の優れた目を持っていたりと、その規格外じみた能力から拓二達を散々苦しませてきたが、夕平の力やその他の要因も加わり敗北。ムゲンループの住人である拓二によって殺され、暁が桜季の手によって殺されるという因果に終止符が打たれた。

 狂宴編では拓二の中の幻覚として再び現れ、彼を苛んでいる。

 拓二は最後の最後まで判別が出来ないでいたが、死ぬ間際にてムゲンループの住人でないことが明らかとなった。



・尾崎琴羽

 拓二達と同じ高校の生徒。

 本来明るく、人懐っこい性格であったが、『四月一日』からムゲンループの住人以外の人間が『機械』に見える能力に目覚め、その恐怖から家族にも会わず部屋に引きこもっていた。

 その際偶然拓二を見かけ、その安堵からか拓二に対し依存的愛着を持つ。

 一方拓二は、琴羽の目を利用することを思いつき、自分の言うことを何でも聞くように仕立て上げたが、結果としてそれが裏目に出て様々な誤解のうちに暁を事故に見せかけての凶行に及んでしまう。結果拓二から殺意と怒りを買うが、その目の利用価値から殺されずに済んだ。現在行方不明。

 尾崎光輝という同い年の兄がいるが、幼い頃肉親が事故で他界し、現在の尾崎家に引き取られた際に出来た義兄であり、他現在の父母とも血の繋がりは無い。



・細波享介

 探偵。最初は拓二のことを調べるために祈が雇ったが、ムゲンループの存在を知り、その後も色々と協力している。

 大宮清道と知り合いであるなど、様々なコネがあるらしい。



・大宮清道

 日本経済をその手に握る大宮グループの社長。豪胆な性格をしており、かなりの強面。祈や桜季が在校している清上学園のOBでもある。

 裏社会にも精通しており、イギリスマフィア・ネブリナファミリーのボス、マクシミリアンとも面識がある。ムゲンループの存在を知る者の一人。

 大宮紫子という母親がいる。



・蔵石健馬

 暁の従兄で、夕平とも昔なじみ。現在は地元から上京ののち、大宮グループ本社に就職。若くして清道の秘書を勤めている。

 バンド経験がある。



〇イギリス組


・ジェウロ=ルッチア

 ネブリナファミリーの幹部。今代マクシミリアンの娘、エレンの子守及び目付け役。ネブリナきっての武闘派で、傭兵時代の下積みから格闘の腕には厚い信頼を寄せられている。目潰し・フラッシュ対策のサングラスを常備している。

 ボルドマンとは血の掟を結び、固い信頼を寄せている一方で、マクシミリアンの考え方ややり方には良い感情を持っていない節が見られる。

 イギリス編では二重スパイを務め上げ、大恐慌阻止に貢献した。

 エイシアに淡い感情を抱いていた。



・エレン=ランスロット

 マクシミリアンの次女。子供ながら絶世の容姿をしている。生まれつき足が悪く、車椅子で移動している。

 ネブリナの存在を前から知っており、既に血生臭い裏の世界の事情に精通している。

 主に裏切者の審判・処刑の役を担い、自室である『赤い部屋』で行われるその嗜虐的行為は、『噺好きの嬢王様』というイギリスの都市伝説として語られている程。しかし話術巧みに己の数奇な人生を面白おかしく語る拓二に対しては、殺すどころか逆に懐いてしまった。

 自分とは別の世界に生きている姉に、言い知れない壁を感じていたようだが、事件を通して少し仲が良くなった様子。

 好きな物は退屈しないお話とお菓子。



・メリー=ランスロット

 マクシミリアンの長女。エレンの姉。エレンと違い、ネブリナのことは何も知らずに生きてきた普通の少女。

 荒事には不慣れで、裏社会においてはドのつく素人であるが、気の強い性格で、進むべき『道』をまっすぐ見据えることの出来る気丈さがある。裏表がなく、物語上最も真っ当な人物。

 イギリス編では親しくしていたグレイシーの裏切りに、流石に心が挫けそうだったが、拓二の支えもあり最後にはグレイシーに真っ向から一喝入れるまでに成長した。

 妹と比べ、自分の容姿に若干気後れしている様子が見られる。



・マクシミリアン

 イギリスマフィア・ネブリナファミリーのボス。ムゲンループの住人。明晰な頭脳とカリスマ的才能を有し、先を見据えた布石を張り巡らせることに関しては一級品。

 割と神出鬼没で、『どこにでもいる』かのような恐ろしさと、どんなことでも当たり前のようにやり遂げることからもじって『A Common Man(当然の男)』と呼ばれている。

 イギリス編ではムゲンループを繰り返し、イギリス大恐慌を未然に防ぐことに傾倒し続けてきた。そして同じ住人である拓二を利用し、ついにその元凶であるトムソンを討つに至る。

 またその立ち位置から、ムゲンループのルール『ムゲンループの住人が誰かを殺せば、殺された人物は次の週で生き返らなくなる』という内容を、いち早く指摘した。

 千夜川編では、拓二の境遇を利用し、その死闘を見世物にしてネブリナという組織の保身に努めた。しかしその結果、拓二本人からは不信を得ることとなってしまった。

 セリオ、スティーブ、アーロンなど様々な偽名を使い分けており、エレンでさえ本名を知らなかったり、メリーにも銀行員モーリスという偽名でこれまで通していた。



・レスター=バレッド

 マクシミリアンと血の掟を交わした一人。本名はエトー。

 ネブリナ内でも手を焼く程のフリークチームの面々を纏めていた実力者。イギリス編では拓二と一時期行動を共にし、大恐慌阻止に尽力、裏切り者であるグレイシーの存在を示唆し、後を託したのちマクシミリアンの命令の元に殉死。

 マクシミリアンに厚い忠義があり、マクシミリアンが血の掟を交わした者の中で、唯一裏切らなかった人物と言える。

 嘘を強く嫌っており、嘘を吐くくらいなら前以て嘘を吐く旨を宣言するとまで言うほど。

 過去にステファニー(エトー)と直接対決した過去あり。作者のお気に入りでもある。



・グレイシー=オルコット

 ネブリナファミリーの幹部で、マクシミリアンと血の掟を交わした一人。通称ギル。

 ボルドマンの秘書を務めていた時期もあり、その娘であるエイシアや孫娘の姉妹達とも懇意にしていた。

 暗器を巧みに使い、ジェウロとも互角の戦闘能力を見せる。

 イギリス編では、実はネブリナの背信者であることが発覚。エレンの誘拐を実行する。しかしその目的はメリー、エレンをマフィアの世界から遠ざけるためであった。が、メリーに諭され、何かを悟ったように自害した。

 千夜川編では期せずして、以前にメリーに渡していた十字架の暗器が、拓二の逆転の一手に繋がることとなった。

 エスペラント語が話せる。



・ボルドマン=ニコラス

 先代マクシミリアンであり、かつてネブリナを率いていたが今現在は一線から退いている。メリー、エレンの実の祖父であり、今は亡きエイシアの父。

 イギリス編では、姿を眩ませていたマクシミリアンの代わりに拓二の力を見定め、大恐慌阻止に協力した。

 人望に厚く、ネブリナ内でも強い影響力のある人物である。

 そして、現在は……。



・グーバ=ウェルシュ

 マクシミリアンと血の掟を交わした一人。

 現代医学の権威であり、専門分野は精神科であるが医者としては生幅広い知識と秀でた技量を有する、生ける伝説として名が知られている。一方で、人体実験など黒い噂も少なくない。

 ネブリナお抱えとして、かつてはエレンの主治医を務めていたこともある。

 ムゲンループの住人であることが千夜川編終盤にて発覚。そして狂宴編の現在、ついにネブリナに対し反旗を翻した。



・ベローナ=ウェルシュ

 フリークチームの一員。普段はベッキーと呼ばれている。エレンよりも年下で、ネブリナファミリーの中では最年少。拷問術に秀でており、どんな人間でも耐えきれないその所業を恐れられ、『涙好き』の異名まで持つ。

 壊滅したフリークチームの中で唯一の生き残りであり、現在は出世したらしく、千夜川編ではマクシミリアン直々の命令で拓二に協力した。保護者でもあり、絶対に逆らえないグーバに付き従っている。

 グーバと同じく、ムゲンループの住人であることが千夜川編終盤にて発覚する。



・ビリー

 本名、ステファニー=ベイカー。元は上流階級の議員の令嬢であった。

 数百年に一度の天才と称され、たぐいまれな才能を有していたが、厳しい家庭環境のもと、体裁と過度な期待によってエスカレートした教育法に反発し、屋敷の住人を皆殺しにする。

 元々性同一障害であったところに精神がさらにこじれ、多重人格に目覚めた際に、元人格であるステファニーもとい『エトー』は封印されていた。

 イギリス編でエトーとして目覚め、カマタリ、ジャッカルを殺してからネブリナの制圧部隊に取り押さえられた。

 現在はグーバの傍に常に控えている。



・カマタリ

 イギリスバー『the workplace』を経営する日本人バーテンダー。日本語表記で『鎌足』。ネブリナの一員ではないただの一般人であるが、フリークチームに実質所属しているようなものだと見なされることが多い。マクシミリアンに惹かれて肩入れしているだけのオカマ。

 マフィア同士の抗争の中でも健闘するなど、常人離れした怪力の持ち主である一方、フリークチームの中ではかなりの常識人。

 教会にて、覚醒したエトーの人格によって殺害されている。



・ジャッカル

 フリークチームの一員。そのあまりにも醜い顔から、『不揃いのジャッカル』と呼ばれている。 

 モルヒネ、ドーパミン、アドレナリンなど、自分に都合のいい脳内麻薬を意識的に作り出す体質。それ故生まれつき疲れ知らず、痛み知らずな身体であるらしい。(RPGのようにHPさえ無くならなければ基本何をやっても死なず、アイテム一つですぐに回復する人外じみたタフネスと回復速度があると思っていただければ)。

 カマタリ同様、エトーによって殺害される。



・トムソン=チャベス(コーサス=オルコット)

 世界的に有名な資産家で、イギリス大恐慌を引き起こそうとした張本人。事実拓二やマクシミリアンの話から、一度大恐慌には成功していたらしい。

 目的は、金という一つの物差しによって人間の『振り分け』が行われた『正しい世界』の構築ということだが、実は慈善団体の創設にも携わっていたという経緯もある。彼が何を思っていたのかは、後々どこかで語られるかもしれない。

 グレイシーの父親であり、彼女を裏で操っていたが、ムゲンループの住人であるマクシミリアンによって死亡。しかし世界的に影響力のある人物であるために、結果としてネブリナにとって現在の敵対勢力を生み出す遠因ともなっている。



・エイシア=ランスロット

 メリーとエレンの母親。愛称はリリー。

 穏やかな性格で、普通にママ友とかいるらしい。しかし夫である現マクシミリアンとの出会いはというと……。

 マフィア同士の抗争に巻き込まれたらしく、現在は死亡している。



〇???


・『ムゲンループ』

 拓二の前に突然姿を現した。自らをムゲンループと名乗る。詳細・目的は一切不明。ムゲンループの真実を拓二に仄めかし、姿を消した。

 拓二曰く、『自分より年若く感じた』ようだが……。


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