狂宴編
第×××話:幕間
運命は、繰り返す。
感情もなく、慈悲もなく、ただただ当たり前のように時の流れを狂わせ弄ぶ。
多くの人間を巻き込み、世界を巻き込み、そこに在る。
今のこの世界に、『進歩』も『成長』も無い。あるのは、不変の『安寧』のみ。
森羅万象は停滞し、実は虚に移ろい、あらゆる行いは無意味でしかない。そんな甘い夢のような世界に、永遠に囚われ続けているのだ。
ムゲンループ────そう呼ばれる現象は、まさに常軌を逸した理の歪み。
世界を、いや宇宙規模の大異変と言って差し支えないはずだった。
だが、世界は何事もなかったかのように穏やかだった。
何故ならば、その存在に気付く者はごく限られていたからに他ならない。
事態を把握するすることも叶わず、何が起こっているのか理解も出来ず、人はループを享受している。
実は今ここにいる自分が、記憶が無いだけで何度も同じ時間を繰り返しているなどと、誰が信じることだろう。
この世に生を受けた初めの産声は、既に無為に回数を重ねた儀式に過ぎないことも知らず、逆に死に咽ぶ声は、それが幾度として繰り返された行為であることを知らないまま。
功績も失態も、出会いも別れも、生も死も、全て無駄なのだ。
何も生まないし、何も得ることがない。
しかし、それを知ることはない。
いやあるいは、知らなくていいことであるのかもしれない。
生命が産まれたという感動は何時までも醒めやらず、死による苦しみも何度も味わわずに済む。
知らないということは、本当は美徳なのかもしれない。
今この瞬間、自分達が無駄なことを繰り返していると、絶望しなくていいのだから。
夢のような時間の人形でいられるのだから。
────
例えその行く末に待つものが、どんな目を覆うべき悲劇や鼻で嘲笑すべき喜劇であろうと、全ては因果と時の螺旋の赴くままに────
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