無題

@suba81

第1話

 空高く舞い上がる風船は風に誘われ、進路を変える ゆらり、ゆらり、 とあっちへ行ったりこっちへ来たり。

 昔の私にそっくりで想わずくすりと笑う。

 誘われているときは楽しさに隠されて、苦し みを知ることはない。

怠け者。

 流れる私に合わせて、歩を進めるがすぐに、濁流が目の前に現れて、諦める。

「そっちへ行ってはいけないよ」

 言葉は私に届かない。

 手紙を書いても、濁流がくしゃくしゃにしてしまう。濁流を泳いで渡ろうとしても、際限なく続いていて、私までたどり着くことはない。

 後悔は、後から次第に私を蝕む。

 人間とはそういうものだ。現実を突きつけられてから悩み苦しみ、もがく。

 徒労。

 今を受け止めなければならない。

 風船はどこまでも続く青い空を純粋に昇っていく。



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