-VIRUS- 侵略行為 1
現代/表参道大学/継士
その異変に
前に座っていた、携帯でワンセグ放送を見ていた男子学生達が突然騒ぎ始めた。どうせ下らない話題で騒いでいるのだろうと思い最初のうちは無視していたものの、放送から偶然耳に入り込んできたニュースキャスターの言葉を聞き、今度は継士が仰天した。
「おい、どういうことだ!」継士は思わず身を乗り出し、男子学生の群れに混ざろうとした。後ろを一斉に振り返った彼らのうち一人がよく聞こえるようにとの意図だろう、持っていた携帯を継士の前に差し出した。
『先程気象庁より入った情報によると、千葉県東方沖一五〇キロ地点にて、隕石の様な物の落下が確認された、とのことです。津波等の情報は今の所入っておりませんが――』
そこで映像が途切れると、画面は砂嵐へと切り替わる。
あれ、おかしいな、と携帯を取り出した学生が色々とボタンを押し、操作してはみるものの、間もなく画面左上の電波状況は圏外となった。
同時に周りの学生達が一斉に喚きだした。何事かと思って訊ねてみると、どうやら彼らの携帯も一斉に電波が通じなくなったようだ。
まさかと思い、継士は自分の携帯を取り出し、開く。画面左上には前に座る集団と同じく、圏外の二文字が表示されていた。
携帯が圏外となったのは継士とこの男子学生のグループだけではないようだ。教室内の至る所から声が上がり、それらの全てが、携帯が圏外になっていること、そして一斉にその現象が皆に起こっていることを叙述していた。
通信会社の電波塔に障害が起こったのだろうか――その考えを継士はすぐに掻き消した。教室内の皆が、継士が契約している通信会社を使っている可能性はゼロに等しい。
そうなると、各通信会社の電波塔が全て異常を来すような事態が起こったとしか考えられない。
継士は荷物を纏めると、携帯の電波が一斉に切れたにも関わらず、暢気に笑い合う学生の群れから早々に遠ざかり、教室から外へと飛び出した。
隕石の落下により何らかの電波が発生し、あるいは通信に必要な何かが壊れ、携帯が使えなくなる。科学的な知見は中学生の時点で止まっているので、そうだと仮定するしかない。
そして、一帯を圏外にする程の異常が起きるのならば、隕石の大きさも小さい筈がなく、海に落ちたのなら津波等に警戒しなければならないのではないだろうか?
同じような考えか否かは分からなかったが、廊下には他にも異変に気付いて教室を出たまではいいものの、どうして良いか分からないのだろう、右往左往する学生がちらほら見られた。
継士自身も教室を出た後、何をするかまでは考えていなかった。だが突如として轟音が聞こえ、窓の外を一筋の光が横切ったのを見た瞬間、考えるまでもなく彼は自分が起こすべき行動を決めた。
直後、激しい揺れが街を襲った。
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