-REAPER- 強襲部隊 4
中世/オルレアン郊外/ヴィンセント
「
対峙する戦争機械から声が発せられた時、継士の呼吸を含めた全ての動作が止まった。
ただ、剣を振り下ろす動作を一番に止めたのは、その声の主が一瞬で誰だかわかり、そして諸々の感情が沸き起こる前に、彼自身の本能がそうさせたからに他ならない。
やがて、真紅の戦争機械の頭部が静かに持ち上がり、内部の操縦室を露わにした。
昊だ。
鹿野絵昊が頭部に座っていた。
「あら……運が良かったじゃない。もう出会えるなんて」隣で腕組みをしながらほむらが呟く。
「昊!」
継士はホロググラム・ディスプレイを操作し、セラフの胸部を開こうとする。しかし、「継士、待ちなさい!」と、ほむらが鋭い声で彼を制止すると、目の前に漂っていたホログラム・ディスプレイを継士の手の届かない所へと追いやった。
「ほむら! 何をする!」
「……あんたの出会ったタイミングは、最悪に近いのよ」
次の瞬間、ほむらの背後、メイン・ディスプレイに映る真紅のATSの右腕が、飛んできた矢によって吹っ飛ばされた。
背部カメラには満身創痍になりながらも片膝をつき、折れ曲がった右腕を伸ばし、小型の弩から矢を放ったATSが映し出されていた。
立ち上がり、此方へと歩み寄ろうとしていた昊の身体が前のめりに倒れかけたが、彼女は何が起きたのかを察したのだろう、素早く頭部の中へと戻ると、よろめくATSを数歩後退するのみに止め——左手に握る弩を、セラフに向けた。
「昊!」
継士が絶叫するが、彼女は躊躇いなく引き金を引いたようだ——幸いにも狙いは彼ではなかった。
背後で鈍い音がし、振り返ると、先程まで昊と対峙し、この状況に乗じて弩を引いた鶏冠頭のATSの脚部を矢が貫通していた。
再び正面を向くと、彼女の機体は継士を置き去りにし、既に遠くへと移動していた。
「昊、待って!」
セラフの出力を最大にし、昊の機体の後を追う。だが、踏み出せたのは数歩のみだった。
継士はようやくほむらの言葉の意味を理解すると、セラフを停止させた。昊の機体に次々と他のATSが合流し始め、そして背後には、彼らと争っていた——つまり継士が味方した勢力のATSが集まり始める。
「な……」
呆然とする継士を尻目に、昊のATSは地平線の彼方へと消えていく。
「さて、これからどうしましょうか」継士の隣で、ほむらが腕を組みながら呟いた。「鹿野絵昊は、あんたが味方した勢力の敵のようだけど?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます