ヲタク女子の憂鬱(3)

「松林くん。あなた、彼女はいないの?」

「な、んだよ急に」

「いるの、いないの。どっち」

「……いませんが」

 唐突な質問に戸惑いながらも、松林と呼ばれる黒髪男子は別の何かを言いたげな表情で答えた。

 その返答に満足したのか、茶髪女子は髪を後ろへとはらった。

「そう、なら良かったわ」

「え」

「だって放課後に彼女をほっぽいてあたしといるとか普通ありえないから。だから聞いたんだけど…なに?」

「いや、そうだな…うん」

「なに、さっきっから。気持ち悪いんだけど」

「…俺……、今日は帰るわ、んじゃ」

 先程まで他愛のない会話をしていたが、彼女の話題で男子の方が反応がおかしかった。彼は通学鞄を持つと一人で教室を出て行った。

「…………変なやつ」

 引き止めもせず、そのまま彼女は腕を枕にして寝始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る