ワンコと兄貴

「亘!」

「坂本くん、おはよ」

 パッと見弱弱しそうな雰囲気を持つ男子の首に手を回すのは、バスケ部で副主将をしている朝からテンションの高い男子だった。

「おま、いつまでおれのこと苗字で呼ぶんだよ。もう一回自己紹介しとくか?」

「まだ慣れないだけだよ、遼太郎りょうたろう君」

「ぃよし!」

 明るい笑顔で話す彼は、クラスでも部活でも中心にいた。

 そんな彼と初めて話したのは、彼女ができて一ヶ月が経過したころだった。



「近藤…でいいよな?」

「え、……そう、だけど」

「わりぃ。おれ、坂本遼太郎。一つお前に聞きたいことがあったんだ」

「……どのような?」

 同じクラスだから亘は名前を知っていた。ただ、話したことがなかったのだ。

 人気者で明るい彼に、近付きたくなかった。

「美由と付き合ってるって、本当か…?」

「……うん」

 頷くべきじゃなかっただろうか。

 クラスで見る顔と声が全く違かった

 しかし、二週間が経過している時点で二人の関係は校内全体に伝わっていた。

「そうか。…………」

「え…?」

 最後の一言、それが聞き取れなくて顔をあげれば、遼太郎はいつものように笑っていた。

 その後、彼はそのまま部活へ向かっていった。何を言ったのか、未だに亘は聞けないでいる。

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