先生と金魚(3)
「センセー」
「…なんですか」
その日の放課後、坂本は今日も金魚に餌をあげている佐藤先生のもとにいた。
嫌な予感がしながらも、彼は呼びかけに答えた。
「センセーって独身ですか?」
「……そうですが」
「彼女はいないの?」
「いませんね…」
「一人暮らし…?」
「……なんでそんなことまで聞くんだ」
「もしかしてセンセー、マルヤスーパーの斜め向かいに建っているマンションの五階の五二三号室じゃ――」
「なんで知ってる!」
金魚の餌やりを終えたのか、蓋を閉めながら大声で言った。
「エスパーが、この間先生を見かけて着いて行ったって」
「遠藤か…」
「孝太郎、こんなところにいたのか。帰らないのか、って先生と何してんの」
「生徒とセンセーの信頼関係を築きにここでお話をしている」
「人生相談じゃなくて?」
「最近、俺の扱いが若干雑になってないか…?」
入ってきたのは、ちょうど話題に上がっていた遠藤だった。
「遠藤か…この間っていつの話だ…?」
「先生、話が突拍子過ぎて分かりません」
「ついさっき、センセーん家の質問をしてたんだ」
「まさか、おれが着いて行った話をしたのか…?」
「うん」
「プライバシーもクソもないな、お前は。…すいません先生、悪気があったわけじゃないんです。ただトイレットペーパーを尻尾にして斬新なスタイルをしていたので声をかけようかと迷っているうちに先生がご自宅に入られたので…」
「もっと早くに声をかけろ! 迷うなアホっ!!」
「! す、いません…」
もの凄い剣幕で先生は言った。
そこに爽やか先生で通っている彼の姿はなかった。
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