不良と、めげずに走る犬(2)

「……ね、美由ちゃん」

「うるさい、しゃべるな」

「…………あのね」

「しゃべんなって、言ってんだよっ」

「………………手、繋いでもいいかな?」

「…………」

 昇降口から校門までの道のりで繰り広げられている、有名カップルの会話。

 どうやらこれも日常茶飯事のようで、周りの生徒は気にしながらも少し早足で歩いていく。

 彼女の方が、周りを気にするタイプらしく、人がまばらだとあっさり解決する会話も、この日の場合は職員会議等で帰宅する生徒が多くいた。

 それでも彼氏は声をかけたのだ。

 男子たちは心の中で称賛する。

 これも有名な行事の一つ。ほかの生徒たちは二人の邪魔にならないよう早めに帰るか、二人が帰ってから帰宅する者も結構いた。

「ごめん。人が多いから…ダメ、だよね…」

「…………」

 あっさり引く彼氏にさみしそうな顔をするツンデレ彼女。

 しばらく考え、彼女にしては大胆な行動――制服の端を指先で掴む――をした。

 彼氏はそこであえて何も口には出さず、人がいなくなるまで無言で歩き続けた。



「あれが男ってもんだ、がんばれ、ヨウ」

「まずは告白しないとね、ヨウ」

「だから、俺には無理だって…」

 二人の少し後ろをゆっくり歩いていた一年生三人組が、そんな会話をしていた。

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