ヲタク女子の憂鬱(2)

「あたしってさー、モテるじゃん?」

「……ソーデスネ」

 ある日の放課後、教室の窓側の席で男女二人がまた話していた。

 一人はメガネをかけた茶髪女子。もう一人は癖の強い黒髪の男子。

 唐突にその話題にすり替えられた男子は、片言に返事をした。いつものことのような反応だった。

「ということで、恋愛トークをしましょ!」

「どういうことでだよ…。女子としろよ、ほら、あのいつも一緒にいる先輩と」

「美由ちゃん先輩は、彼氏との惚気のろけ話にしかならないから却下」

「そういえばさ、あの二人ってホントに付き合ってんの」

「松林くん…。きみは何を見て言っているのかね」

 両肘を立てて手を組み、顎を乗せて神妙になるその声に、男子は少し戸惑った。

「そ、そりゃー、昼休みの会話を聞いていれば誰だって――」

「あーあーあー! これだからバカは」

「……」

「いい? あれはツンデレなのよ!」

 彼女の癖なのだろうか。人差し指を男子に向け、ちょっとドヤ顔をする。

「ツンデレのド定番、“べ、べつにあんたのことなんて好きじゃないんだからねっ”ってやつの上級版よ、美由ちゃん先輩のは!」

「あれただ怒ってるだけじゃん…」

「じゃあ、彼氏先輩に聞いてみれば? 美由ちゃん先輩の魅力は何ですか~、って」

「…俺、先輩と話したことないっていうか、知り合ってもいないんですケド」

「あたしが紹介したげる」

「結構ですっ」

「いーじゃーん! 面白そうで!」

美代みよが聞けばいいだろ、知り合いなんだから」

「……美由ちゃん先輩がヤキモチ妬くから聞けましぇーん」

「聞こうとしたのかよ…」

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