不良と、めげずに走る犬

「で、今日のクルミパンは」

「ごめん、購買のはもうほとんど売り切れてて…」

 スポーツ校で有名なこの高校でも、不真面目な生徒はやはりいるようで。

 今日も昼休み、学校の裏側へ続く外廊下の端で、そのやり取りは行われていた。

「走んの、お前遅いもんな」

「ごめん…」

 コンクリートの階段に腰を下ろし、舌打ちをする少女とその斜め前に立つ気の弱そうな男子。

「ちょー腹減ったんですけど」

「ごめん…」

「マジありえない。もう帰ろうかな。てか帰りたい」

「それはダメ…だよ」

「なんでよ」

「だって、その…美由ちゃん出席日数、足りてないよね…?」

「なんでそんなこと知ってんの、キモイ」

「ごめん…!」

 いつもの光景なのか、将又はたまた関わりたくないのか、ほかの生徒たちは声もかけず見ないふりをして目的地へと背を向けていく。

「だから、その……代わりに僕のお弁当、食べる?」

「………………」

 一瞬、彼女の目が輝いたかのようにも見えたが、気のせいだろうか。

「いらない、よね」

「……ちょーだい」

「うん…!」



 補足するが、二人はこの学校で有名なカップルだ。

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