第6話 戸張翔の場合
生まれて17年間、恋愛で困ったことなんて無かった。
恵まれた顔立ちと、作り上げた“表の性格”のおかげで。
小学校の頃から、俺はモテていた。
だけど、告白してくる奴には興味なかった。
だって、俺には……たった1人だけ、本気で好きな奴がいたから。
本当に好きで、心から大切にしようと思った。
中学生になって、晴れてそいつと付き合えるようになった。
でも……
「あたし、別にアンタの事好きじゃないし。アンタは黙ってあたしの横にいればいいの」
そいつは、俺が好きなんじゃなくて、“俺と付き合っている”という事実と、その事実からくる周りの好奇の目が欲しかっただけだった。
もちろん、そいつとはすぐに別れた。
本気で恋をするなんて、馬鹿馬鹿しい。
そう思ってから、俺は恋愛をゲームだと思うようになった。
相手を落としたら、ゲームクリア。
こんなリアルで面白いゲームなんて、他に無いだろ。
友達と一緒に、誰が1番早くクリアできるかも競った。
まあ、大抵の女子は俺が告白したら、すぐにOKくれたから、俺の1人勝ちが続いたけどな。
今回も、そうなるだろうと思ってた。
だけど……
「ごめんなさい。あなたとはお付き合いできません」
告白した後に、そんな言葉を聞いたのは初めてだった。
女子にフラれるなんて、初めてのことだった。
ショック、というよりかは、驚きのほうが大きかった。
全く予想していない事だったから。
「くくっ……あーっはははっ!!」
気がつけば、俺は声を出して笑っていた。
だって、まさか、フラれるなんて思ってもみなかったし。
声を上げて笑っていると、目の前にいる女子はポカンとしていた。
アホみたいな顔。
こんな奴が、俺をフッたのかよ。
……おもしれえ。
そそくさと帰ろうとしたそいつを引き止めて、俺はそいつの眉間に人差し指を立てた。
「1年」
「え?」
「1年で、俺に惚れさせてやるよ」
そう言って、俺はそのままツンッと眉間を押した。
「ぬおっ……!」
間抜けな声出しやがって。
まあ、いい。
このまま引き下がるのはしゃくだからな。
見てろよ、広瀬歩夢。
絶対に落としてやる!
ヲタク系女子の攻略法 双葉 ちほ @tiho-futaba
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