第30話 未来への希望


 佐和子が帰り、夜の営業を終え、後片付けも済んだ深夜のテーブル。


 開店&引っ越しパーティーの時を思い出す。


 フオンはやはり、もう眠っている。

 有希子の携帯電話を借りて写メをバンバン撮り、フオンはとても楽しそうだった。はしゃぎ疲れたのだろう。



 ホアがハス茶を淹れながらため息をつく。


「この短い間で、あそこまで開くとは思わなかった……ユキコのおかげね」

「私も、聞いていたことよりエネルギーがずっと明るかったので、驚きました」


 カイも、心底感心している。


「そんな……私はただ、自分がしたいことをしただけで……どっちかっていうと、私のほうが楽しんでたような気がするし……」


 有希子は、他人に手放しで褒められるのは苦手なようだ。

 自分では「イイ女」とか豪語するくせに、他人に褒められると急にシオシオとなる。


「何よりも、有希子さん自身が楽しんでるから、佐和子さんも遠慮をしなくて済んだんじゃないかなぁ」隆太も素直に讃えた。




 たった3時間ほどの宴だったが、その間にも佐和子のエネルギーは徐々に解放されていった。


 決定打となったのは、フオンの無邪気な、しかしどこまでも本気の一言だった。


「もしサワさんが間違えて火をつけちゃったら、わたしが消してあげる。頑張ってお水出せるようになるから、大丈夫。怖くないよ」


 そう言われた佐和子は一瞬言葉につまり、そして「ありがとう……」と涙ぐんだ。


「私……私のこと、今までどおりサラって呼んで下さい。サラマンダーの、サラ」


 そう言って、涙を拭きながら笑った。



 自分の能力を受け入れて心を開いた今、これから先、サラの瞑想は進化しエネルギーは成長するだろう。


 サラが悪夢を見なくなる日も、遠くないかもしれない。隆太はそう願った。



 * * *



 翌朝、瞑想を終えて部屋に戻った隆太に、サラからの嬉しい報告が届いていた。


 今朝の瞑想で、サンセベリアの葉が美しく輝くのを見たというのだ。

 メッセージの文面から、興奮と感動が伝わってくる。


「今なら、世界は本当に美しいのかもしれない、って思えそうな気がします」



 想像以上の進化の速さだ。今まで感情を押し殺していた反動なのかもしれないな……


 そう思いながら、返信を終える。メッセージに、クラッカーが弾けている画像を添付した。


 さあ、グエンファミリーに報告だ。お祝いしなくっちゃな。

 隆太は弾む足取りで階段を駆け下りた。




隆太のブログ「瞑想成功おめでとう!」

http://tsubasanomoribito.blog111.fc2.com/blog-entry-32.html

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