第15話 宇宙のエネルギー


「宇宙と、繋がる?!」


 昨日もらった料理のタッパーを返そうとリュックに手を伸ばしかけていた隆太は、かなりの勢いで振り返った。

 首がグキッと音をたてた。



「そう。今日は、一本ずつの樹と繋がった。でも、周りのもの全てと繋がることができる。地球の全部と、宇宙です。フオンは、いつも出来ます。私たちは、まあ、大体出来ます」


 ホアが微笑みながら頷いた。この人は、いつもにこやかだ。


 隆太は、フオンを改めて見た。普通の、可愛らしい小さな女の子だ。

 母親の手につかまりニコニコして隆太を見ている。


 一見、どこにでもいる幸せそうな家族。

 それが、水を操る力やら宇宙と繋がるやら……


 隆太はほんの一瞬、目眩を覚えた。



「その……宇宙と繋がると、どうなるんですか?」


 宇宙人と交信出来たりするのだろうか……? そう思ったが、口には出さない。

 魔法学校の二の舞は避けたかった。人間は、学習するものなのだ。


「宇宙はたくさんのエネルギーに満ちています。そのエネルギーに繋がり、分け合うことが出来ます。

 そうするうちに、自分のエネルギーがどんどん膨らみます。

 心が愛に満たされ、ゆったりとして、ピースフルになります。そして、強く健康になります。とても」



 帰り道、4人は歩きながら話した。

 瞑想について。それによって得られるものについて。


 ホアが朝食に誘ってくれたので、隆太はありがたく誘いを受けることにした。



 * * *



 たっぷりとした朝食を食べ終えハス茶を飲みながら、隆太は心を決めた。


 瞑想は面白い体験だった。このサレンダーの力のことも、もっとよく知りたい。


 よし。守人、やってみようじゃないか。



 ……だが、意気込んで決意を表明した隆太は、肩すかしを喰らうことになった。


 隆太の部屋のリフォームも終わっていないし、店舗の工事や機材の搬入が全て終わるまでには あと2~3ヶ月かかるということだった。



「まさか、こんなに早く返事をもらえると思わなかったから……」と笑う一家は、それでも嬉しそうだ。


 そうですよね。俺、ちょっと張り切りすぎちゃいましたね~ ……などと頭を掻きながら、隆太は「そういえば……」と(照れ隠しも兼ねて)気になっていたことを訊ねてみた。


 サレンダー、という言葉の元々の意味について。



「そうですね……明け渡す、とか引き渡す? ええと、ビジネスでよく使いますね。

 ただ、私たちの場合は………力を受け入れること」


「自分自身を、そのチカラに明け渡すってこと?」


「そうではなく……自分の中に、力が育つことを認める。そんな意味で使っているように思います」


 ふうん。自分自身はあくまでも保ったまま、チカラに隷属せずに……共存する。自分のスペースの一部を、チカラに明け渡す。

 そんなイメージだろうか。



「じゃあ、サラマンダーっていうのは?」


「サラマンダー?」


 3人とも、不思議そうな顔をしている。


「あの、不思議な夢を見たことは、昨日お話ししましたよね。

 『サレンダー』って言葉のあとに、『サラマンダー』って言葉も聞こえたんです」



 そう。フオンの力を目のあたりにした時、自然とこれがサレンダーだとわかったのだ。

 だとしたら、サラマンダーというのは、もうひとつの不思議「ネコの顔をした龍のようなもの」を意味するのではないか。


 だが、3人には何も思いあたることは無さそうだった。


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