第61話 商店街の孤独
彼らが楽しく談笑しながら食事をしている頃、エリックは駅に向かいながら天空橋界隈を見学していた。
ごみごみした街だ。狭い通りに、小さな建物がひしめき合っている。
活気があるとも言えるのだろうが、言葉の分らない彼にとっては、ただ喧しいだけだった。
大体、この国は信用ならない。
成田空港を出てから少しの間、エリックは自分のスマートフォンに集中していた。
だが、ふと気付くと電車の窓の外は高層ビルが立ち並ぶ大都会へと変貌していた。
先ほど見た田園風景が、幻だったかのように感じられた。
まるで、騙し討ちにあったみたいだった。
庶民的な店が建ち並ぶ、夕暮れも間近なショッピングストリート。
主婦らしき女性達、連れ立って歩く子供達、様々な商店の主たち。
一見、緊張感の微塵も感じられない、生活感に溢れた人々だ。
だが、この街の住人が空を飛んで大火災をくい止めたというのだ。
知らず知らず、ひとりひとりを睨みつけるような眼差しで注視していた。まるで、こちらの隙を突いて今にも飛び立つのではないかとでもいう様に。
俺はもう騙されない。
そして、特別なのはお前等だけじゃない。
俺の方がもっと、ずっと優れているんだ……
言葉も通じない異国の地で、余計に孤独感が増した。
だがそれは、彼が他者に対して密かに優越感を感じる際に必ずついてまわる、お馴染みの感情だった。
あちこちの店先から美味しそうな匂いが漂ってくる。
彼は空腹を感じていたが、ホテルに着くまで我慢することにした。
ホテル近くのコンビニか、ハンバーガーショップで夕食を調達しよう。
まだ、この街に気を許してはいないのだ。
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