第10話 格がカンストして、昇格するようだ


 川から救いだしたダークエルフの少女を、焚き火で暖めながら見張りをしていたムクロは、ふと今のステータスが気になった。

 水溜まりでも、ステータス確認に使えるのか気になったムクロは水魔法を発動させて、地面に直径20cmの作り出し覗き込む。


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ムクロ


 スケルトン族(異世界人)


 男?


 享年32


 職業:ホネをはじめました:格9


 MP φψπσЕБυАВξПДГХФХ


 ちから 16 (+11)


 みのまもり 16 (+11)


 すばやさ 19 (+12)


 かしこさ 18 (+11)


 ボーナスポイントBP 6


 【固有能力ユニークスキル】


 Re:ボーン


 【能力スキル】


 魔力強化 LV2


 魔力武装 LV2


 配下契約 LV2


 スキルポイントSP 8


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 配下 ポチ子


ポチ子


 コボルト族


 メス


 0才(生後1ヶ月)


 職業:2本立ちを始めました:格4


 MP 25


 ちから 4


 みのまもり 4


 すばやさ 6(+2)


 かしこさ 5(+1)


 ボーナスポイントBP 3


 【固有能力ユニークスキル】


 特殊個体


 【能力スキル】


 じゃれる LV4


 幸運  LV2


 食欲神の加護 LVーー


 スキルポイントSP 3


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 ー…と、いう具合に成長していた。ムクロの格に至っては、早ければ今日中にも上がって、進化なり昇格が起こりそうだ。

 ポチ子は順調……なのだろうか?

 この数日、戦闘には参加していないのだが、もう『4』まで上がっている。ウェルデから聞いた話では、彼だけではなくポチ子も成長が早い感じを受ける。


「きゅきゅん! きゅ~~ん」


 ポチ子がムクロに対して、警戒を呼び掛けた。実際問題、何を言っているのか鳴き声から判断しているのだろうか?

 ちょっと憂鬱そうに立ち上がるムクロ。何故その様な状況かと言うと、今回の戦闘で格が上がる可能性が非常に高いのだ!

 そうなると気になってしまうのが、昇格ないし進化である。どちらにしても初めての経験なので、腰が引けている。


「きゅううん……きゅきゅん!」


 その躊躇いを許してくれない存在が、ポチ子なのであった。一応ながら"愛犬"のラインで接しているポチ子から、背中を「早よせい」と押されている感じである。

 散々渋っていたムクロだったが、ポチ子の執拗なまでの催促に折れてしまうのだった。


「分かっているよ……」


 リバーサイデリアに存在するらしい、食欲神に気に入られ加護を獲ているポチ子は、とかは全くない!!

 それどころか自身が勝てる敵には、『我、突貫!!』といわんばかりにぶつかって行く。


「あれは、"ホーンぎゅう"だな」


 ムクロの口から出た名前にはツッコミたいところだが、最初からその名mー…名称だったので諦めるしかない。名称を教えたのは当然の如く、自称博識のウェルデであった。

 この森に出るモンスターは、格の違いこそあれど【階位】は全く同じであった。大体、最下級の職業で階位も最低。格は1~5と低いモンスターのオンパレードである。


 ウェルデが知らないことだが、この森は冒険者たちには『初心者の森』と呼ばれている。それくらいモンスターが弱いのだ。


「ホーンぎゅうは、この森の主的な存在だって話だが……弱くねえ??」

『お主の格が上回って、ステータスが高くなったのが原因だ』


 対峙していると感じてしまうものだ。

 今までに数匹のホーンぎゅうを倒してきた感じから、油断してしまうムクロ。しかしながら、ホーンぎゅうの攻撃は頭部から生えた1本の角である。

 それさえ回避すれば、ダメージとして喰らうのは、その肉体からくる突進である。今までの奴らと違う強さに驚くが、ムクロは自身のステータスには及ばないことを感じとる。

 今までにムクロが倒してきたモンスターの数は、40匹になる。3日間でと考えると以上な数である。

 驚くなかれ!! そのモンスターたちの肉はのである。総重量1tと言っても過言ではない量を食べきって尚、ポチ子の胃袋はご飯を求めているのだ!!


「(恐らく……オレとコイツには、格差はほとんどない!!)」


 ムクロの予想は当たっていた。このホーンぎゅうは、森に住んでいた(現在はポチ子のお腹)群れのボスであり、格は少なく見ても”7”はあるであろう!

 ちなみにポチ子に至っては、今まで食したホーンぎゅうより大きい個体であることに気付き、喜びのあまり尻尾がビュンビュンと動いている。


「(きゅきゅきゅん♪)」

『ぐ~ごろごろぉぉぉぉ』


 ポチ子の興奮につられるかのように、お腹の音もボリュームを上げてゆく。


 その間も、ムクロの戦いは続いていた。自分と同格といっても良い、強敵が現れたのだから……。ホネの顔に表情が浮かぶなら、獰猛な笑みを浮かべているであろう予想は容易い。

 ムクロは己に眠る固有能力ユニークスキルをフルに稼働させ、武器を生成する。たった3日だが、その密度は異常なほど濃かったので〈Re:ボーン〉に関しては、ほとんど無音・時差なしで使えるようになっていた。

 真っ白な純白を思わせる大鎌デスサイズの柄を両手で持ち、振り下ろした!! 魔力武装と身体強化の2つが、歯車のように「カチリ」と噛み合うのを感覚で感じとる。


「せいっ!!」


 ビィュン!! と鋭い音を鳴らし、デスサイズの刃が大気を切り裂く!!


 ガキィン!


 まるで金属同士が打ち合ったかのような、鈍い音が森の中に木霊する。ホネとホネのぶつかり合いだが、勝負を制したのはムクロであった。

 ある意味当然の結果と言える。全く同じホネ同士であるが、ホーンぎゅうの角とムクロの手にしているデスサイズでは、ホネの密度に恐ろしい差がある。

 どれ程の重量かは分からないが、10体分のホネを圧縮して造り出しているのだ。しかも使用しているホネは、ムクロのホネに吸収され、ある種のを遂げている。

 それは、ホネ中に魔核コアが複数存在する状態である。ムクロとウェルデの2人はこの現象を、【細胞魔核化マノシス】と名付けている。


 ━━ザシュッ!!


 ムクロの返し手の一閃が、ホーンぎゅうの首を切り飛ばした!!

 ムクロの体、そしてコツ器ともいるデスサイズ。両者を用い、歯車がしっかりと噛み合うと、通常の倍……3倍くらいの威力を出しそうだ。

 フーッと必要のない息を吐き、精神の昂りを抑えようとするが、そんな事は不要だ! と言わんばかりの声が響く。


【経験値の獲得を確認しました。規定値に達しましたので、"格"が上昇します】


「あ"…………」


 体を包み込んでいた熱は、一気に消えて無くなった。その代わりに襲ってきたのは、背筋が凍りそうな恐怖であった。


「あ"ばばばばばばばば……!!!!」


 今までと比べ物にならない痛みが、ホネの中から襲ってきた!!

 ミキミキィ、メキメキィっと表皮をメリ上がってくる。それは、アスファルトに亀裂をいれて太陽に向かう雑草のように……。


【格が規定値になりました。引き続き、を行います】


「う"がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 ムクロには過去の……、理科の授業で見たことのある、地球の断面図が思い浮かんでいた。その絵はマントルが海底に押し出され大陸プレートが、産み出されるかのようだ。

 何故、ムクロがその様なイメージを持ったのかと言うと、ホネ中に散らばっている魔核コアから膨大な魔力が無尽蔵と思わせるくらい湧き出しているのだ!

 それは、体表にヒビを入れてドンドン大きくしていく。そのヒビが全身に回るのに、それほど時間はかからなかった。

 全身に行き渡ると共に、そこから光が溢れ出し周囲を白く包み込んだのだ!!


【昇格が完了しました。職業が『ホネになってきました』になりました】


 ムクロの頭の中にその声が聞こえてきたときには、以前より白くなった体がローブから覗いていた。彼が目覚めるのは1時間後で、ダークエルフの少女が目覚める30分前であった。

 ムクロが気を失っている傍では、ポチ子がホーンぎゅうを美味しそうに食べていた。当然のことではあるが、目覚めた頃にはホネと魔核コア以外は残っていなかった。


「きゅきゅい~~ん♪」


 主人であるムクロが大変な目に遭っているのに、実にマイペースな愛犬である。

 まあ、尻尾をブンブンと振り回している姿を見ていると、可愛いものであるのは否定できない。

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