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ねすと
自慢できないぼくの成績
ぼく、『名前矛盾』こと『夢見 うつつ』には保育園時代から中学現在まで続く友人が一人だけいる。
名を『土樹 空海』。別称『景色写真』。
もっとも、『名前矛盾』にしろ『景色写真』にしろ、ぼくたちがお互いを呼ぶときにしか使わず、また普段からそのような別称を使っているわけではない。
別称を使うときは、協力して欲しいとき。もっと言ってしまえば“お前しか頼れる人がいないから助けて欲しい”というときだ。
だから普段、中学校などでは“土樹くん”“夢見”と名字で呼ぶようにしている。
今まで別称で呼び合ったときは何度かあるか、“事件”の名の付くものはわずかに三回。
別称を作るきっかけになった『三ッ角ストーカー事件』。別称を作ったことをすっかり忘れていたときに起こった『清橋封鎖事件』。そして土樹の家に空き巣が入ったときの『日記消失事件』。
どれも小さな事件(モノ)で、警察が調べようともしない小さな小さな事件ばかりだっだ。(三つ目は、空き巣については調べられたが日記については取り合ってくれなかった)
どの事件も一応解決はしたものの、綺麗にすんなり解決とは行かなかった。当たり前と言えば当たり前だ。ぼくは一端の学生であり、しかもどの事件のときも、ぼくは小学校だった。
特別な知識も天才的な閃きも、天性の勘もない。ついでに言えば名探偵でもない。本職である警察に勝るものなど、なにひとつないのだ。
だから別称を使うときはスリルのあるお遊びとして。二人だけの秘密の共有として。ただ、それだけにすぎなかった。
中学生になった今でも、それは変わらないと信じている。
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