3 Toilet


 あたしのアパートのトイレには、たまにおじいさんの霊が出ます。


 特に害はありませんが、誰も入っていないというのに鍵が掛かっていたり、気がつくと側に立っていたりすることがあるので、その度に芦原さんが「この変質者が」と力尽くで叩き出しています。


 その日もトイレに入ると、おじいさんと鉢合わせしました。


「…………」


 やはり何をするではないですが、ただじっとあたしが服を脱ぐのを待ち構えています。


 困りました。芦原さんは大学へ行っていて、今は家にはいないのです。いくらおじいさんとは言え、男性にそんなところを見られるのは恥ずかしかったので、あたしはもじもじしながら「出て行ってください」と目で訴えかける他にありません。


 しかしおじいさんは出て行くどころか、便器の中に入って『come on!』などと拙い英語で話しかけてきました。


 あたしは頷き、水洗ノブを捻ります。


 おじいさんは流されて行きました。

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