1.Secret Fortified City 秘密要塞都市

 グローブマスターは、要塞の滑走路に着陸した。そして機体がすっぽりと入る建物に入りエンジンを止めた。

 霧﨑とアンジェは、空輸艇を後にしてウーラの指示通り、近くに止めていた軍用ジープに乗り移動した。

 この軍事要塞はとにかく広い! 広大な敷地に倉庫のような建物が軒を連ねて並び、道路は肩幅五車線の道が、この基地を十字に割っていた。

 滑走路は、この広い道路に沿うように外枠付近に四本設置され、自分たちが乗ってきたのと同じような機体や、最新鋭の戦闘機、ヘリコプターが数多く見られた。

 道路沿いのある敷地には、戦車や体躯ミサイルの発射装置が目に入る。しかし、人影はこの広さにしては、物凄く少なく感じた。

 二人はあるポイントに着き、ジープを降りて建物の中に入り、真っ直ぐな軍事施設にはそぐわないオレンジ色をした通路を歩いた。

 すると通路は、外壁と同じ色の壁に遮られた。

「ミスター霧﨑、これより先はブレイン及びメンバーのみが入れるエリアになります。アンジェ・フィアロンを一時的にあなたのサポートメンバーに登録します。承認してください」

 ウーラがアンジェの登録要請を求めた。

 霧﨑は承認を受諾した。

「承認する」

「了解しました。アンジェ・フィアロンをあなたのサポートメンバーに登録しました」

 するとその閉ざされた壁は、斜めにスライドするように開きその後ろに鋼鉄で出来た分厚い壁が現れた。その壁には、網目に張り巡らされた電線のような線が青白い光を浮かばせていた。

「これより生体認証を行います。ミスター霧﨑、壁に触れてください」

 霧﨑はウーラの言う通り、手の平をその青白い光を放つ鋼鉄製の壁に押し充てた。

「生体認証確認、 認証コード794682。キリザキユウヤ。サポートメンバー、アンジェ・フィアロン。スキャン完了しました。このエリアへの侵入を許可します」

 ウーラが二人を認証すると、その壁は静かに透き通っていった。

「間もなくホールウエィのスティションホームに出ます。六番ホームに停車している車両へお乗りください」

 ウーラが言った通り、しばらく行くとゲートが立ち並ぶ広い駅のホームのようなところに出た。

「えーと六番だったな。アンジェこっちだ」

 アンジェは霧﨑におずおずと就いていった。

 そこには、流線型の車両が扉を跳ね上げていた。二人はその車両に乗りシートに座った。

 すると、扉は静かに車体を包み込む様に下がり、ゆっくりと発進した。

 今、二人は地下十キロにある研究所のゲートを目指している。車両は静かに加速をしている。だがシートに座る二人には下に落ちているという感覚はなく、ただ平行に加速している感覚しかなかった。

 実際には、垂直なトンネルを落ちるように車両は進んでいる。

 これは、ある区間ごとに重力地場を作り出し、車体を引っ張るような感じで速度を調整している。車両にもその装置があり、速度に合わせ床方向に架かる重力を都度調整している。

 地下に落ちている。だが感覚は普通に列車に乗っているのと変わらなかった。

 すぐに車両は減速をしホームに滑り込むように入り停止した。

 扉が静かに跳ね上がり、二人は車両を降りた。


 そこは、どこか懐かしさを感じる駅のホームの風景で、どこからともなくさえずり、飛びかう鳥たちがホームの屋根に数羽泊っている。そして、上を見上げると上空には、薄っすらとした雲が広がる青空があった。

「まったく、日本とはえらい違いだな。どうしたらこんなもんまで作れるんだ」

 霧﨑は呆れるように言い放ち、ホームの端の方で、自分たちを待っている人影を見て、静かに歩きだした。

 そこには三人の女性が、霧﨑とアンジェの乗る車両を待っていた。

 一人は、軍服を卒なく着こなし、オレンジのベレー帽を被った。いかにも私は出来る! とオーラを放つ女性。

 その隣に、研究員用の白とオレンジカラーをした制服のボタンを広く外し、上にはおる白衣に手と突っ込み、揚々たる雰囲気を醸し出た。くるっとした赤毛の長い髪を持つ女性。

 そしてもう一人。全身白で統一された制服を身に着け、彼女たちの後ろで少しうつむきながら、恥ずかしそうにスカートの裾を気にしている、ブロンズの髪を持つ女性。

 最初に口を開いたのは、あの軍服を来ている女性だった。

 彼女はカットかかとを合わせ

「ミスター霧﨑博士、で、宜しかったでしょうか? 私、カリス軍Alma Dane(アルマ・デイン)大尉であります。博士がお越しになるのをお待ちしておりました」

 霧﨑は、彼女の勢ある挨拶を

「ああ、出迎えありがとう」と彼女の顔を見もせず、赤毛の女性の方へ顔を向け

「久しぶりだね。 Patty(パティ)」

 白衣のポケットに入れている手を取り、彼女のからだを引き寄せて、キスをしようとした。

 アルマは、霧﨑の行動を見て目を丸くしていた。

 そして、彼女は霧﨑の唇に指を添えて

「あら駄目よ。相変わらずなんだから」

 その表情は妖艶たる女性の赴きを感じさせた。

 アンジェは霧﨑の後ろで、ぶうっと頬を膨らませ。

「何よ、あんな年増なんかに………」

 はっとして

「私何考えてんのよ。関係ないじゃん………」

 少し顔を赤らめて俯いた。

 霧﨑は

「なんだ、そっけないなぁ。久しぶりに最愛の元妻に会えたのに」

 霧﨑のその行動に、怪訝そうにしていたアルマは 

「ドクターパティ。い、今のは、一体どう言う事ですか?」

 彼女はパティを問いただすように言った。


「あらぁ、言ってなかったかしら? 彼、私の元旦那。もっとも一年間だけだったけどね」

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