世界と時間を食らう空間世界 World and time To eat The Space world.

Second story . opening 第2話・オープニング

 ここはアメリカ、ネバタ州 トワヤブ国立森林公園をはるか後ろに臨んだ砂漠の一角。

 そこには、アメリカ軍とは別な民間の軍事施設がある。

 その軍事施設は、普通?いや通常の施設とは異なっていた。その本体は

 軍事要塞の地下十キロに現在では想像にしかならないことを研究している施設があった。




 「監視衛星メソット目標ポイント到達。当位置を補測、映像出ます」

 中央制御管制室の大型センターパネルに軍事要塞の映像が映し出される。

 「ホールユニット、臨界点到達まで後八パーセント」

 「バイオメトリクス、クリア。オペレーターID7958201100認証。ウーラノス(天空神)アクセスコンプリート。オペレーターバイタル正常。コックピット重力場シールド展開。カタパルトロック、クリア。オールグリーン」

 機体のセンターパネルが外の風景を表示する。後方で作業員がカタパルトの横でシグナルを表示している。

 彼女の両サイドにある細かな計器パネルが一斉にオレンジからグリーンに変わる。

 「まったく、本当にこのパネル見ずらいわね。ウーラ、フルスクリーン展開」

 彼女が指示すると、柔らかな女性の声で

 「了解しました。フルスクリーンに切り替えます」

 すると、コックピットの球体全体がスクリーンに変わり、まるで空中に浮いているような状態になった。

 「そう、これこれぇ」

 そう言って彼女は懐かしさと共にテンションを上げ、またがっているシートを後部に移動させ、グリップを握り前傾姿勢になる。

 「コントロール。空域確保確認。ミクトランシワトル発進を許可します。発進後、七十六秒で大気圏を離脱、ポイント7699で待機。カウント開始、六十秒スタート」

 専用パネルがコールを告げる。

 「まったく何よ、こんな時に」

 彼女は怪訝そうに、コールを受けた

 「おい、大切に扱ってくれよアンジェ。こいつはまだ試作機なんだから」

 「解ってるわよ。まったく心配性なんだから。私を信じられないの」

 彼女は彼の忠告を遮った。


 そしてグリップを握りしめ、天を仰ぐように

 「さぁ行くわよミクト。この日をどんだけ待った事かしら」


 カタパルトのシグナルが、赤からオレンジに変わり点滅が始まる。

 「テン・カウント入ります。8・7・6……」

 「ホールウェーイ、射出点に到達。出力クリア」

 「カウント、3・2……」

 シグナルが、オレンジの点滅からグリーンに変わると同時に。

 「ミクトランシワトル(死神)テイクオフ」


 カタパルトはその人型に類似した機体を轟音と共に押し出した。

 射出口から出ると同時に彼女は、アクセルペダルを踏み機体を上昇させた。

 白い水蒸気がその機体を包み込む


 「ミニマム・シュグアルツ・シルト」

 

 彼女がコックピットで命令すると、その機体は青白い光のラインを上空に描き、一瞬で消え失せた。



 この研究は、世界二十か所に研究施設を持っている。

 その内、最先端で且つ、大規模な研究所施設を有する国は三カ国。アメリカ、オーストラリア、そして、僕たちが「ユリカ」の研究を行っている日本。


 この三つの研究所には、大型のバイオサーバーが現在、十五台づつ設置されている。そのサーバーの処理能力は、一台につき人間の脳、百個分の処理能力を有していた。

 思考回路のみを言えば、人間はその思考処理を脳全体では行ってはいない。だが、このバイオサーバは人間の様に身体を持たない。その制御をしなくてもいいのだ。

 その分、演算処理にそのリソースを利用できる。

 このバイオサーバを現在の物理的なプロセッサーに例えるなら、十六万ビットのCPUを、およそ二億個組み合わせた物になるだろう。

 

 そして、アメリカの研究所は新たに五台のバイオサーバを新設した。



 ここから先は、僕が日本の研究所に入る二年前の話になる。




 Second story 第2話

 

World and time To eat The Space world.

 世界と時間を食らう空間世界



 そのコンボイは、巨大な車体が巻き上げる砂漠の赤い砂を、霧の様に辺りを曇らせながら走っていた。

 その運転席で、無精ひげを生やし、頭をぼさぼさにした三十五歳くらいの男性が、そのコンボイを運転していた。

 助手席には、つややかなブロンズの長い髪を持つ女性が、もうこの景色は見飽きたと言う表情で、シートを倒し寝そべっていた。

 「ねぇ、一体いつになったら着くの。私、退屈で死にそうなんだけど」

 彼女はふてくされた様に、コンボイを運転している男に話しかけた。

 彼は、ちらっと横目で彼女を見ると

 「もう少しで着くさ」

 「ねぇさっきから、もう少し、もう少しって言ってるけど、本当、いつ着く予定なの」

 「さぁなぁ。おっきな建物の防護壁が見えたら、そこが終点だ」

 

 彼の名は、霧﨑裕也きりざきゆうや

 そして、助手席に乗り、彼を呆れた様子で見ている彼女の名は

 Ange ・Fearon (アンジェ・フィアロン)

 霧﨑裕也とアンジェ・フィアロンは共にアメリカの研究所の職員だ。


 だがこの二人の立場は違っていた。


 彼、霧﨑はついこの前まで日本の研究所で、ユリカのプロジェクトに関わっていた研究員だった。

 彼の専攻は、ロボット工学。博士の称号を得ていた。

 その技術は、医療界では最先端の技術として称賛されていた。

 手や足を失った患者に、その代わりの手足を提供できていたのだ。

 それは、義足・義手のようなものではなく、その本人が思うように関節が動き、しっかりとした感覚を脳に伝えていた。

 いわゆる、次世代の人口節足又は節手と言うものだ。

 霧﨑はユリカのプロジェクトで、ボディデザイナーのグイドと共に、論理骨格に基づいた骨格デザインを行っていた。

 だが、世界的に知れ渡った彼の功績に、目を着けたアメリカの研究所が彼を引き抜いたのだ。

 その研究所では、ある機体を作り上げる研究を主としていた。

 そして霧﨑は、その研究のトップチーフとして迎えられた。

 彼は、日本を離れアメリカの大地へ移った。

 そして、すぐにその機体の研究に就く予定だった。

 それは彼の性格がなすものか、又は彼に何かの思惑があってそうしたのかは解らない。


 彼は、一か月の間、消息を絶った。


 彼、霧﨑も端末を携帯している。

 バイオサーバは常に霧﨑の行動を把握していた。そんな彼の行動に機密を漏らすような行動がないと判断したバイオサーバーは、彼の捜索を行わなかった。

 

 霧﨑はその間、アメリカ全土を巡り、ある人材を探していた。

  

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る