第44話 比較

 私はすごくなんてない。すごいのは片岡さんだけ。比較されるのが嫌だったからできれば私が薬剤師である事は隠しておきたかったけど、バラされてしまった。

「姪っ子さんも薬剤師なんですね。あっ、よろしくお願いします。片岡です」

「あの、朝倉春香です。薬局で働いています。宜しくお願いします……」

 私は片岡さんのキラキラした笑顔に、軽く会釈で返した。

「あっ、そうだ。朝倉さん、ちょっと聞いてもいいですか?」

「はい……」

 私は嫌な予感がした。薬剤師だとバレた後の質問はきっと医療系の質問だろう。不勉強な私は答えられる自信なんてなくて、質問なんてやめて欲しかった。

「朝倉さんの薬局って、痛みの評価は何でやってます? FPS? それともVAS?」

「……」

 予想通り、答えられる質問ではなかった。

 私は、FPSとVASが何の事かさっぱりわからなくて、その恥ずかしさと情けなさで下を向いてしまった。

「もし、朝倉さんが痛みの評価してくれれば、きっと私より正確にできると思って。やっぱりご家族の方は私たちより患者さんに身近で、気付かないところも気づいてくれる事も多いし……」

「ちょっと、確認しておきます。すいません……」

「お願いします。じゃぁ、また来ますね」

「おぅ、またな」

 片岡さんは元気良く病室から出て行った。その瞬間、肩の荷が下りたようにホッとした。

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