第40話 入院
月曜日、おじちゃんは予定通り入院して抗がん剤も始まった。病棟や病室もおじちゃんからラインで教えてもらったので、私は毎日仕事帰りに一度顔をだしてから家に帰るようにしていた。
「おじちゃん具合はどう?」
「まぁまぁかな。それより春香ちゃん、新しく指名はとれたかい?」
「ううん。全然ダメ」
「なんだよ。俺がいなくなったら指名ゼロじゃねぇか」
私はおじちゃんの事で頭がいっぱいで、指名なんてどうでも良くて指名を取ろうともしていなかった。おじちゃんが亡くなったら指名もゼロになるけど、そのままクビにされても良いとも思っている。それなのに、おじちゃんは自分の病状より先に、私の仕事を心配してくれる。その気遣いに私は胸が苦しくなった。
「ねぇ、おじちゃん」
「なんだい?」
「ううん、なんでもない」
本当は「死なないで」って言いたかった。でも、言おうとした瞬間その言葉は言ってはいけないような気がして、ぐっと飲み込んだ。
予後は数ヶ月。抗がん剤をやったところで、死にゆく運命を変える事は出来ない。どんなに予後を伸ばしたとしても一年はもたないだろう。それでも死なないでって思う事はいけない事だろうか。
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